リハビリのやる気が出ない…動機づけの重要性とモチベーションを高める具体的な方法
2025.12.15
リハビリはすぐに成果が出るものではないため、継続して取り組む必要があります。しかし、長期間にわたってリハビリを行っていると、「やる気が出ない」という時期が訪れるでしょう。
そのような時期を乗り越えるために重要なのが、リハビリにおける動機づけです。動機づけを賢く活用することで、モチベーションを維持・向上しやすくなります。
リハビリを成功に導くためにも、意欲が低下する背景とやる気を引き出すポイントを理解しておきましょう。本記事で紹介するモチベーションを高める方法を活用して、家族や周囲の方のサポートに役立ててください。
目次
リハビリの意欲を数値化!動機づけの基礎と測定ツール(ApathyScale)

リハビリは、短期間で効果が得られるものではないため、モチベーションを維持して継続的に取り組む必要があります。その際に重要になるのが、リハビリにおける動機づけです。
動機づけの重要性を理解したうえで、測定ツールを活用して、今の意欲はどのくらいなのかを確かめてみましょう。
リハビリ継続の鍵:外的動機づけと内的動機づけのバランス
リハビリにおける動機づけは、リハビリを継続するための行動や心の活動を引き起こす、心理行動的プロセスです。これは、患者さんが目標を達成しようとするモチベーションを高めることが目的とされています。
これは、「外的動機づけ」と「内的動機づけ」の2種類にわけられます。
- 外的動機づけ:外部からの賞賛や褒め言葉など、外的要因によって行動が促される状態。短期的な効果はあるが、持続性に欠けることがある。
- 内的動機づけ:その行動自体に楽しさや達成感を求めて、行動が促されている状態。他者からの評価や報酬を目的としないため、モチベーションを維持しやすい。
リハビリのモチベーションを維持するには、外的動機づけと内的動機づけをバランス良く管理することが重要です。
意欲低下を判定する「やる気スコア」(Apathy Scale)の測定方法
ApathyScaleは、意欲低下を簡単に判定する指標として、リハビリ現場でもよく活用されているツールです。具体的には、14項目の質問があり、各質問に対して0〜3点(1〜8と9〜14で点数のつけ方が異なる)の4段階で点数をつけて測定します。
- 新しいことを学びたいと思いますか?
- 何か興味を持っていることがありますか?
- 健康状態に関心がありますか?
- 物事に打ち込めますか?
- いつも何かしたいと思っていますか?
- 将来のことについて計画や目標を持っていますか?
- 何かをやろうとする意欲はありますか?
- 毎日張り切って過ごしていますか?
→全くない3、少し2、かなり1、おおいに0
- 毎日何をしたらいいか誰かに言って貰わなければなりませんか?
- 何事にも無関心ですか?
- 関心を惹かれるものなど何もないですか?
- 誰かに言われないと何もしませんか?
- 楽しくもなく、悲しくもなく、その中間位の気持ちですか?
- 自分自身にやる気がないと思いますか?
→まさに3、かなり2、少し1、全く違う0
目安となる点数は16点で、点数が高いほど意欲低下が強い状態であることを意味します。
参考:j-stage「やる気スコアを用いた脳卒中後の意欲低下の評価」
認知症高齢者の意欲を客観評価:Vitality Indexの活用法
意欲の指標(VitalityIndex)は、介護やリハビリ現場で、高齢者の意欲・活力を客観的に評価するために活用する評価方法です。「起床」「意思疎通」「食事」「排泄」「リハビリ・活動」の5つの項目で構成されており、認知症が進行している方や、要介護状態の方の意欲を評価するのに役立ちます。
評価項目が少なく活用しやすいツールですが、意識障害や重度の臓器障害のある方は測定できません。また、除外項目がある場合は合計点数での判断が難しくなることもあるため、注意して活用するようにしましょう。
参考:日本老年医学会「意欲の指標(VitalityIndex)」
「やる気が出ない」の背景は?意欲を引き出す動機づけの基本戦略

リハビリのやる気が出ないのには、その方によってさまざまな背景があります。適切な対応を行うためにも、どのような要因があるのかを理解し、リハビリの意欲を引き出すために必要な動機づけの基本を頭に入れておきましょう。
リハビリ意欲が低下する主な要因:身体機能、環境、認知症アパシー
リハビリの意欲が低下するのには、さまざまな要因があります。
- 身体機能の低下
- 生活環境やリズムの変化
- 認知症アパシー(無関心や無気力の状態になる)
高齢になると、筋力や柔軟性が年々低下することで関節の硬さや痛みなどが強くなり、身体を動かしにくくなります。このような身体の変化は活動意欲にも大きく影響するため、身体機能の維持・向上が必要不可欠です。
また、定年退職後は仕事や役割がなくなったことで、無気力になる方も少なくありません。家での役割や趣味などを見つけておくのがおすすめです。
効果的な声かけとコミュニケーション:意欲を引き出す具体的なポイント
リハビリのやる気を引き出すには、適切な声かけやコミュニケーションが重要です。ただ「〇〇をやりましょう」と声をかけるのではなく、具体的なポイントを伝えることを意識しましょう。
例えば、歩行のリハビリを行っているのであれば「前よりもしっかりと歩けていますよ!」のように伝えると、患者さんの意欲を引き出しやすくなります。また、その方の名前を呼びながら声かけを行うのも効果的です。
モチベーションを維持する短期目標と長期目標の立て方
モチベーションを維持するためには、短期目標と長期目標の設定が有効です。
- 短期目標:1週間〜1ヶ月程度を目安に達成できる小さな目標
- 長期目標:短期目標よりも長い期間で達成を目指す大きめの目標
このような目標設定をすると、成功体験を積み重ねながらリハビリに取り組めるため、モチベーションを維持しやすくなります。適切な目標設定にするためにも、医師や専門家のアドバイスを受けるのがおすすめです。
家族・介護者ができる!意欲を引き出す【背景別】具体的なサポート方法

リハビリを継続するには、家族のサポートが欠かせません。それぞれに合ったサポートを行えるように、リハビリの動機づけでやる気を引き出す工夫を背景別に紹介します。
【対人関係】職員が苦手な場合の対応と信頼関係の築き方
リハビリのやる気が出ない要因として、職員やスタッフが苦手なケースは少なくありません。このような場合は、担当のスタッフや先生を一時的に変更できないか、相談してみると良いでしょう。
担当の方が変わるだけでも、状況が改善する可能性は十分にあります。また、スタッフや職員の方と日頃からコミュニケーションをとり、信頼関係を築くことも大切です。
【意欲向上】リハビリを楽しくするゲーム感覚の導入と外出目標
「リハビリが楽しくない」と感じている方に対しては、まずはその気持ちを受け止めて理由を聞くことが大切です。理由を聞いて原因がわかれば、適切な対処法を一緒に考えられます。
その他にも、ゲーム感覚でできるリハビリを取り入れたり、外出の目標を立てたりするのも効果的です。「あのお店のご飯を歩いて食べに行こう」というように、家族と一緒にできるものにすると、モチベーションの維持につながります。
【環境調整】集団が苦手な場合の個別リハビリ・在宅リハビリへの切り替え
集団でのリハビリが難しい場合は、個別でのリハビリや在宅リハビリに切り替える方法があります。特に在宅リハビリであれば、自宅環境に合わせた訓練が可能です。周囲の目も気にならないため、落ち着いてリハビリに臨めるでしょう。
リハビリにおいて人との関わりは大切ですが、無理強いすると逆効果となる可能性があります。本人のペースを尊重し、それぞれに合った方法を選択しましょう。
【Q&A】リハビリの動機づけに関するよくある疑問と専門家の回答

Q:リハビリのやる気が出ないのは怠けでしょうか?
A:いいえ、怠けではありません。痛みや疲労、不安など、心理的・身体的な要因が複雑に重なってモチベーションが低下するのは、リハビリ現場においてよく見られることです。
Q:リハビリのやる気を引き出すための簡単な方法はありますか?
A:まずは、「小さく確実に達成できる目標を設定する」ことです。成功体験の積み重ねが、リハビリ継続の原動力になります。
Q:モチベーションが続かないとき、休んでも大丈夫ですか?
A:短い休息なら問題ありません。ただし、長期間の中断は筋力低下につながるため、理学療法士と相談しながら調整するのがおすすめです。
Q:家族として、どのように励ましたら良いでしょうか?
A:無理に励ますよりも、「共感と寄り添い」が重要です。その方の感情を受け止め、小さな進歩を一緒に認める姿勢が、モチベーションの維持・向上につながります。
Q:「リハビリが辛い」「投げ出したい」というときがあります。対処法を教えてください。
A:休息を挟みながら負担の少ないメニューに切り替える、無理のない進め方を選ぶことが大切です。リハビリの専門家や担当のスタッフなどに相談し、目標や計画の見直しを行うと改善する場合が多いです。
まとめ:リハビリの動機づけを活用し、成功へ導くモチベーション維持の鍵

リハビリはすぐに結果が出るものではないからこそ、「動機づけ」の力が欠かせません 。もし、ご本人やご家族が「やる気が出ない」と感じたら、それは決して怠けではありません 。
まずは、「やる気スコア(Apathy Scale)」や「意欲の指標(Vitality Index)」といった評価を使って、今の気持ちを客観的に測ってみましょう 。そして、その意欲低下の裏にある背景(身体的なつらさ、生活環境の変化など)を理解することが、適切なサポートへの第一歩になります 。
大切なのは、無理のない目標設定と、温かい共感と声かけです 。これらのポイントを押さえ、本人の力を最大限に引き出すことができれば、きっとリハビリは成功へと向かうでしょう 。








