漸増抵抗運動は取り入れるべき?効果を出すために知っておきたいこと
2024.07.17
リハビリのトレーニング方法の1つとして漸増抵抗運動(ぜんぞうていこううんどう)があります。リハビリスタッフから漸増抵抗運動を行う旨を告げられたり、ご自分で調べたりして漸増抵抗運動を知る方がいらっしゃるでしょう。しかし、内容がわからないと不安になりますよね。
漸増抵抗運動は病気や怪我をした方だけでなく、高齢の方へのリハビリ方法としても効果があると報告されています。漸増抵抗運動の効果を発揮させるために、内容・リハビリの流れを知っておきましょう。
また、漸増抵抗運動のメリット・デメリットを知ると、より安全かつ効果的にトレーニングを進められます。適切なリハビリによって生活の質を改善したい方は、是非参考にしてください。
目次
漸増抵抗運動は何に効果がある?リハビリへの導入や訓練の流れも
漸増抵抗運動とは、運動負荷・抵抗を徐々に増やしていくトレーニング方法のことで、リハビリで活用されます。スタッフから「漸増抵抗運動を取り入れます」と言われても効果や内容がわからないと積極的に取り組めないでしょう。漸増抵抗運動の定義・効果・リハビリの流れをご紹介します。
漸増抵抗運動の定義と効果
漸増抵抗運動は徐々に運動の抵抗を増やしていき、筋力・持久力を向上させる目的で行われます。筋肉は収縮すると筋力が向上しますが、最初から最大の抵抗をかけるのは危険です。トレーニングの安全性を高めるために、少しずつ筋へ抵抗を増やしていきます。
筋力を向上させるといっても、必ずしも器具を使った筋力トレーニングを行うとは限りません。高齢者や筋力が低下している方は、重力だけでも筋肉に抵抗をかけられます。漸増抵抗運動を取り入れたところ、入院中の高齢患者さんの機能が1ヶ月で改善したという報告があります。年を重ねても適切な負荷・抵抗のもと、トレーニングをすると運動能力や生活動作が改善するといえるでしょう。
リハビリとして漸増抵抗運動を行う流れ
リハビリで漸増抵抗運動を行う場合、以下のような流れになるのが一般的です。
- 評価を行う
…現在の身体機能を把握するために、運動機能の評価が行われます。筋力だけでなく、日常生活動作やバランスの評価も実施されるかもしれません。これは、1つの評価では日常生活にどう繋げるかの判断が難しいためです。
- 負荷・回数・方法の検討
…評価結果をもとに、筋肉にかかる負荷・1日に行うべき回数・どのような方法で抵抗を与えるかが検討されます。
- 筋肉にかける負荷を徐々に上げる
…漸増抵抗運動では、筋肉への負荷を再設定すると、さらなる筋力増強が見込めます。最初は重力に拮抗する動きだけだった患者さんが、徐々に器具などを利用してトレーニングを進めていく場合があるのです。
- 再評価をし、日常生活への応用を考える
…一定期間のリハビリ・トレーニングが終了すると、最初に行った評価をもう一度行います。漸増抵抗運動の効果を数字で判定するためです。リハビリが継続される場合は目標の再設定が行われ、退院が近い方は日常生活への応用方法が検討されるでしょう。
参考:EBPTワークシート第21回「入院中の高齢患者に対する漸増抵抗運動の効果」
漸増抵抗運動の効果はあるが注意点も…メリット・デメリットは?
漸増抵抗運動は高齢者でも筋力・持久力・日常生活動作能力が向上する効果があります。しかし、取り組み方を間違うと痛みや疲労・オーバートレーニングになる可能性があるので注意が必要です。漸増抵抗運動の効果を引き出すためにメリットとデメリットを知っておきましょう。
漸増抵抗運動のメリット
漸増抵抗運動は負荷が低い運動から始まるため、高齢者でも始めやすいです。筋肉が増強して立位や歩行動作が改善されるだけではなく、代謝や筋の柔軟性の向上も見込めます。筋持久力が向上し、疲れにくい身体作りができる点がメリットです。
漸増抵抗運動のデメリット
漸増抵抗運動を行っても、効果はすぐに表れない点に注意しておきましょう。特に高齢の方はすぐに高負荷をかけられないため「効果が出ない」と感じるかもしれません。漸増抵抗運動は続けるのが大切です。
また、漸増抵抗運動は1つの筋肉にのみアプローチしても効果が出にくい特徴があります。そのため、鍛えたい筋肉ではない部分のトレーニングが行われるでしょう。身体全体の筋力のバランスを整え、達成したい日常生活動作につなげるためのリハビリが行われています。
不明な点を抱えたままではリハビリに消極的になってしまうので、スタッフに相談してみましょう。
安全に漸増抵抗運動を取り入れるには専門家のサポートが必要
漸増抵抗運動は一般的な筋力トレーニングだと誤解されますが、全く違うものです。負荷のかけ方・回数の設定を間違えると疲労や怪我の原因となります。そのため、リハビリ専門家とともに行うのが重要です。漸増抵抗運動を取り入れる際のポイントを2つご紹介します。
負荷の設定は専門家に任せる
筋力の維持には最大筋力の20〜30%以上の負荷が必要で、筋力増強には最大筋力の40〜50%以上の負荷が必要だといわれています。そのため、専門家に現在の筋力や動作を評価してもらい、適切な負荷を設定してもらう必要があるのです。
理学療法士はリハビリの専門家です。自費でリハビリを検討している方は、リハビリを専門とするスタッフに漸増抵抗運動をしてもらえるのかを確認しましょう。
筋力を向上させた後の目標設定が大切
漸増抵抗運動をはじめとするリハビリには個別性が重要です。筋肉や骨などの身体の作りは同じように見えますが、身体の使い方や目標とすることは患者さんによって違います。漸増抵抗運動を入れて、日常生活で何をしたいのか・どのようなことができたら人生が輝くのかなどの目標設定が大事です。
リハビリを受けるだけでなく、今後の目標について相談できるリハビリサービスやスタッフを選ぶと生活の質が向上しやすくなります。
参考:筋力増強運動の基本と実際
まとめ|漸増抵抗運動について
今回は、漸増抵抗運動の概要とメリット・デメリットについて解説しました。
「なんとなく聞いたことある…」「先生が言っていた」と気にしていた方も少なくないでしょう。漸増抵抗運動は病気や怪我をした方だけでなく、高齢の方へのリハビリ方法としても効果があると報告されています。
理由として、漸増抵抗運動は負荷が低い運動から始まるため、高齢者でも始めやすいことが挙げられます。代謝や筋の柔軟性の向上も見込め、筋持久力が向上し、疲れにくい身体作りができる点がメリットです。
漸増抵抗運動の効果を発揮させるために、内容・リハビリの流れを理解しておくことも大切です。