痙縮メカニズムをわかりやすく解説!痙縮の症状や治療法もご紹介
2024.09.27
痙縮(けいしゅく)は、脳や脊髄の病気が原因で、筋肉を緊張させたり緩めたりする指令がバランスを崩してしまうことで起こります。
筋肉に力が入りすぎて動かしにくくなったり、自分の意思とは関係なく勝手に動いてしまう運動障害の一つです。さらに、ただ動きにくいだけでなく、痛みを感じることもあります。
痙縮をそのままにしておくと、関節が硬くなる「拘縮(こうしゅく)」という症状に進行する恐れがあります。そうなると、日常生活で困ることが増えてしまいます。だからこそ、痙縮の仕組みを理解して、早めに症状の改善に取り組みたいです。
今回は、痙縮がどうして起こるのかをわかりやすく説明し、さらに痙縮の症状や主な治療法もご紹介します。
目次
痙縮のメカニズム|痙縮の主な症状や引き起こる原因とは?
痙縮は手足の突っ張りや曲がったままの状態になるなど、日常生活に支障が生じます。放っておくとさらに症状が進んでしまうので、早めに対処する必要があります。
まずは、痙縮の理解を深めるために、症状や痙縮メカニズムについて解説します。
痙縮とは
痙縮とは、脳や脊髄の病気により、無意識に筋肉が緊張しすぎて、動かしにくかったり、手足がつっぱったりする筋異常のことです。
わずかな刺激でも筋肉が異常に緊張し、動かしにくくなるだけでなく痛みを伴うことも。痙縮の治療をせずに放置しておくと、さらに症状が悪化し、日常生活に支障をきたします。
また、痙縮はリハビリテーションの妨げになるとされ、脳卒中の後遺症として重要な治療対象となっています。
痙縮の主な症状
痙縮の主な症状は以下の通りです。
- 肩や肘が固まったまま伸びない
- 手の指がにぎったまま開けにくい
- 足指や足の裏側にまがる
痙縮が起こると日常生活にどのような困りごとがあるかも見ていきましょう。
<日常生活に影響する痙縮の症状>
- 着替えや入浴が難しい
- 歩くときのバランスが悪くなる
- ものをつかみにくい
- よく眠れない
- 体に締め付け感や痛みがある
- 曲がった肘が人や物にぶつかる
他にも、体のバランスが悪くなることで、背骨の側弯が出現したり、硬くなった関節を無理に動かたことで、骨折につながることもあります。
痙縮が起こるメカニズム
痙縮が起こるメカニズムは、脳から運動神経までの経路が損傷されることが関係しています。
健康な人の場合、筋肉を緊張させる信号と筋肉を弛緩させる信号をバランスよく体に伝えることで運動をスムーズに行うことができます。一方、痙縮の患者さんは脳や脊髄が障害されたことで、2つの信号伝達のバランスが崩れ、筋肉を弛緩させる信号が弱くなった結果、異常な筋緊張が起こるのです。
脳から筋肉を弛緩させる信号が届かなくなったことにより、脊髄の運動神経が勝手に動くことで痙縮を発症します。
【痙縮】メカニズムからみる原因となる病気や拘縮への懸念
痙縮は脳と脊髄の神経経路が損傷されることで起こることがわかりました。では、具体的にはどのような病気が関係しているのか、また、痙縮を放っておくと発症する拘縮とはどのような症状なのか、詳しくみていきましょう。
痙縮の原因となる病気
病気や外傷により、脳から運動神経までのどこかを損傷することで痙縮は起こります。痙縮の原因となる病気は以下のものがあります。
- 脳卒中
- 脳性麻痺
- 頭部外傷
- 脊髄損傷
- 多発性硬化症
- パーキンソン病
- 低酸素性脳障害
特に小児期の脳性麻痺による痙縮は、変形や脱臼につながり、歩行や運動発達に影響がでるおそれがあるため、大きな問題となります。痙縮は早めの対処が必要な疾患なのです。
痙縮を放っておくとどうなる?
痙縮は放っておいてよくなるものではありません。痙縮の状態が続くと筋肉が固まって、関節の動きが悪くなります。この状態を拘縮(こうしゅく)といいます。
拘縮になると、関節そのものが動かなくなるため、日常生活への支障もさらに生じるでしょう。また、拘縮を起こすと、手足の関節を動かすときに痛みが出るため、患者さんが辛い思いをします。そうなると介護もやりづらくなり、介護側負担も大きくなってしまうのです。
拘縮に症状が進む前に、早い段階で痙縮の治療を行うことが日常生活での負担を減らす上でも重要です。
痙縮の主な治療法は?痙縮メカニズムを理解して治療しよう
痙縮にはさまざまな治療法があります。治療法によって得意不得意があるので、症状に合った治療を選ぶことが大切です。
痙縮の代表的な治療は以下の3つがあります。
- ボツリヌス慮法
- ITB療法
- リハビリテーション
詳しくみていきましょう。
ボツリヌス療法
ボツリヌス療法とは、ボツリヌス菌が作り出すボツリヌストキシンを有効成分とする薬を症状のある筋肉に注射する治療法です。
ボツリヌストキシンには筋肉を緊張させている神経の働きを抑える効果があります。そのため、筋肉に注射することで、緊張している筋肉を和らげることができるのです。
注射後、1週間以内に効果が現れ、3~4ヵ月間の間効果が持続します。時間が経つと効果が弱くなっていきますが、もう一度注射をすれば効果が再び現れます。しかし、短い期間で注射をし続けると、薬に対する抗体ができてしまい効果が得られなくなることがあるため、3ヵ月以上間隔をあけなければいけません。
ITB療法(バクロフェン髄注療法)
ITB療法は他の治療法で効果が十分でない重度の痙縮患者への治療法として推奨されている治療法です。バクロフェンという痙縮を和らげる薬が入ったポンプをお腹に埋め込み、脊髄周辺に直接投与します。おなかにポンプとカテーテルを埋め込むため、手術を行う必要があります。
バクロフェンは24時間以内に効果を消失してしまいますが、ポンプとカテーテルを埋め込むことで持続投与が可能になりました。埋め込んだポンプを操作し、患者さんの状態に合わせて薬の投与量などを調節することも可能です。
リハビリテーション
リハビリテーションは痙縮治療に必要不可欠なものです。ボツリヌス療法などの治療で痙縮がやわらいだ状態でリハビリテーションをおこなうことでより最大限の効果を発揮します。
リハビリテーションは以下のようなものがあります。
- 運動慮法
- 物理療法
- 作業療法
- 装具療法
ストレッチや関節を動かす訓練により拘縮を予防したり、日常生活を送りやすくするための訓練やサポートを行う装具を用いたりします。
リハビリテーションは、障害による日常生活の不自由を減らし、自分らしい生活を送るための訓練です。日常動作で改善したいことなどを医師と理学療法士に相談し、目標設定を行うことからはじめてみましょう。
まとめ|痙縮メカニズムと治療法
痙縮(けいしゅく)というのは、筋肉が硬くなって思うように動かせなくなる状態のことです。その仕組みを簡単に説明すると、脳の中にある運動を司る神経の道が傷つくと、脊髄(せきずい)という背骨の中を通る大事な神経に正しい「動いて!」という情報が届かなくなります。
たとえば、手や足を動かしたいと思ったとき、普通は脳からの指令が神経を通って筋肉に伝わります。でも、痙縮があるとこの指令がうまく伝わらず、筋肉が勝手に硬くなったり、動かしづらくなったりします。その結果、自分の意思とは関係なく筋肉が動いてしまうこともあります。
こうした症状が出ると、歩くことや物を持つこと、字を書くことなど、日常生活で必要な動きが難しくなってしまいます。学校での活動や友達と遊ぶときにも支障が出てしまうかもしれません。
さらに、痙縮をそのままにしておくと、症状はどんどん悪くなっていきます。筋肉がさらに硬くなり、関節が動かなくなることもあります。だから、痙縮がどうして起こるのかを理解して、早めにお医者さんに相談して適切な治療を受けることが大切です。そうすれば、症状の進行を防いで、普段の生活をより快適に過ごすことができます。