パーキンソン病のすくみ足対策|リハビリ時に意識すべきポイントと手法
2024.12.30
パーキンソン病でよく見られる運動障害の一つである「すくみ足」は、歩くことを難しくし、転倒のリスクを高める原因となります。この症状が進行すると、日常生活での活動が減り、結果として生活の質が低下する可能性があります。
このようなすくみ足に対しては、症状に合わせたリハビリが非常に効果的です。たとえば、歩行をサポートする環境を整えたり、特定のトレーニングを取り入れることで、歩行能力を改善し、生活の質を維持・向上させることが期待できます。
この記事では、パーキンソン病の特徴やすくみ足の症状、そして効果的な対策について詳しく解説します。一緒にすくみ足への理解を深め、前向きな生活を目指しましょう。
目次
パーキンソン病への理解を深めよう…症状やリハビリが必要になる理由
パーキンソン病の特徴的な症状であるすくみ足。なぜこのような症状が出現するかご存知ですか?パーキンソン病のすくみ足対策の解説の前に、まずはパーキンソン病についての基礎知識とリハビリが必要な理由をみていきましょう。
パーキンソン病の基礎理解(原因・診断法)
パーキンソン病は、振戦や歩行障害など運動症状を主とする進行性の疾患です。運動症状が起こる原因として、脳内のドパミン(体の動きをスムーズにする物質)を作る神経細胞の減少が考えられています。
パーキンソン病の診断は、特徴的な症状の確認、他の疾患や薬の副作用の除外、そして抗パーキンソン病薬による症状改善の確認という3つの段階を経て行われます。
パーキンソン病によって生じる症状
パーキンソン病の代表的な症状は、振戦(手足のふるえ)、筋強剛(筋肉のこわばり)、無動・動作緩慢、姿勢反射障害(バランス低下)です。
これらにより、手指の細かい動きがしづらくなったり、小刻み歩行、加速歩行、すくみ足といった歩行障害が現れたりします。
また非運動症状として、便秘、頻尿、立ちくらみ、不眠、うつ、幻覚・妄想、嗅覚低下などの症状も認められます。非運動症状は初期症状として現れることが多く、進行に伴って運動障害がみられるようになります。
パーキンソン病の治療
パーキンソン病の治療は、薬物療法が中心です。運動症状の原因であるドパミンの不足を補い症状を改善するため、薬を内服します。
また運動機能を維持するため、歩行訓練や生活動作訓練を中心としたリハビリも行われます。パーキンソン病は進行性の疾患であるため、発症初期からリハビリを行うことで機能の維持や進行を遅らせるなどの効果が期待できます。
パーキンソン病のすくみ足対策はいつから?進行に応じたリハビリが必要
パーキンソン病のすくみ足対策を含めたリハビリは早い段階から開始することが有効ですが、どのくらいの時期から始めるとよいのでしょうか?すくみ足の症状とともに確認しましょう。
すくみ足とは?
すくみ足は、歩行の意志があるにもかかわらず足を踏み出すことが難しい状態のことです。
すくみ足が出現している時は、前かがみになりやすい、焦りが生じやすいなどの状況から転倒のリスクが高まります。パーキンソン病ではすくみ足対策を行い、転倒予防に務める必要があります。
すくみ足が出現しやすいケース
すくみ足は以下の場面で出現しやすくなります。
- 歩き始め
- 方向変換するとき
- 狭い場所を通るとき
- 目的の場所に近づいたとき
- 歩行時に焦りや不安があるとき
特に方向転換時の発生頻度が一番高くなります。症状は、薬の効いていない時間(オフ)に出現しやすくなりますが、方向変換時のすくみ足は薬が効いている時間(オン)でも出現しやすいため、注意が必要です。
参考:倉敷ニューロモデュレーションセンター「すくみ足で転倒しないために!歩行で意識することと介助方法~パーキンソン病患者説明会より~」
ホーン・ヤールによる病気の重症度
パーキンソン病の進行度を評価するスケールとして、ホーン・ヤールの重症度分類があります。
Ⅰ・Ⅱ度は日常生活で介助の必要はなく、日常生活動作の維持や改善に焦点を当てたリハビリを行います。Ⅲ度になると、姿勢反射障害やすくみ足などの歩行障害が出現し、介助が必要になってきます。出現している症状に焦点を当てたリハビリが必要です。
すくみ足をはじめとする歩行障害に対しては、症状出現前に正しく安全な歩行方法を身につけておくことが有効です。初期からリハビリにより歩行方法を習得しておくと、症状進行時にも実践しやすくなり、転倒予防につながります。
介助方法は?パーキンソン病のすくみ足対策…安全な歩行を目指そう
実際にすくみ足があらわれた場合、どのように対処すればよいのでしょうか。パーキンソン病のすくみ足対策として、安全な歩行方法と介助方法をご紹介します。
パーキンソン病のすくみ足対策
すくみ足は、動作開始時の障害です。そのため、最初の一歩を踏み出しやすくなるような工夫が有効です。
- 廊下に歩行の目安となるテープなどを貼る
- 「いちに、いちに」と声をかけながら歩行する
- 方向転換時は症状が出現しやすいため、大回りする
- 不安や焦りがある時は、深呼吸して気持ちを落ち着かせる
特に声かけやマーキングなどの聴覚的・視覚的なガイドは非常に有効です。セラピストと相談しながら進めていきましょう。
またパーキンソン病のすくみ足対策として、日々の歩行訓練も重要です。歩行時は遠くを見る、大股で歩く、振り出した足をかかとから接地する、など安全な歩行方法の習得を目指しましょう。
専門家の意見と正しいリハビリを目指そう
パーキンソン病のリハビリは症状の進行に合わせて調整が必要です。しかし、進行が緩やかなため、適切な評価と対応が難しい場合があります。
リハビリは専門家のサポートを受け、適宜評価やアドバイスを受けましょう。継続的なサポートにより、個人の症状に応じたリハビリを実施することが可能となります。
移動の負担がある場合、オンラインリハビリの利用も検討するとよいでしょう。自宅にいながら専門家のサポートを受け、リハビリを行うことができます。
見守る人の意識と介助方法
すり足歩行がみられる場合、歩行には介助が必要となってきます。まずは病気や症状について、正しい知識をもつことが大切です。正しい知識がなければ、無理やり手を引いたり、歩くことをあきらめたりするかもしれません。
症状を正しく理解したうえで、歩行を見守ること、歩行しやすい環境をつくることが大切です。歩行の妨げになるようなものは取り除き、必要に応じ手すりも設置しましょう。また症状が進んでも可能な限り歩行することで、機能の維持や本人の自信につながります。
焦らず本人のペースに合わせること、動ける時間を有効に使うことが介助者には求められます。
まとめ|パーキンソン病のすくみ足対策にはリハビリが効果あり
パーキンソン病のすくみ足(フリーズ現象)は、病気が進行してから現れることが多い症状です。すくみ足とは、歩こうとすると足が地面にくっついたように動かなくなる状態のことを指します。この症状が出ると、日常生活で転倒しやすくなるなど、大きな影響を与える可能性があります。
しかし、すくみ足が現れてから対策を始めても、思ったような効果が得られないことがあります。そのため、症状が出る前の段階から対策を始めることが大切です。
発症初期のうちに、すくみ足の特徴や予防のための方法を知っておきましょう。そして、早い段階からリハビリに取り組むことで、すくみ足の症状が現れるのを遅らせたり、症状の進行を抑えたりすることが期待できます。たとえば、バランスを鍛える運動や歩行トレーニング、ストレッチなどが効果的です。
さらに、リハビリを行う際には、理学療法士や医師などの専門家に相談し、自分の症状の進行度に合ったリハビリ計画を立てることが重要です。こうした取り組みを続けることで、生活の質を保つだけでなく、よりよい生活を送ることを目指すことができます。
毎日の少しずつの努力が、未来の自分の健康につながります。早めに行動を起こしましょう!