片麻痺患者が日常生活で困ること|生活の質を上げる工夫とは
2024.11.08
脳卒中や事故などで脳を損傷すると片麻痺などの後遺症が残ることがあります。片麻痺は、体の半身が麻痺してしまうため、日常生活で困ることもでてきます。
自分自身、もしくは家族が突然片麻痺になってしまったら「日常生活で困ることはなにか」「どのような援助が必要か」気になります。しかし、片麻痺になっても治療や生活の工夫によって生活の質をあげることは可能です。
今回は、片麻痺の原因や症状、片麻痺患者が日常生活で困ることを具体的に解説します。合わせて、片麻痺の治療や日常生活で困ることの解決方法もご紹介します。
目次
片麻痺の原因や症状について|日常生活で困ることとは?
片麻痺は脳細胞がダメージを受けることで、体の半身に麻痺が出現することです。そのため、歩行や物をつかむ動作、食事などさまざまなことに影響を及ぼします。まずは、片麻痺の原因や症状についてみていきましょう。
片麻痺の原因
片麻痺の原因の多くが脳梗塞などの脳血管障害によるものです。脳の血管が詰まったり、出血したりすることで脳細胞に血液が届かなくなり、脳の一部が損傷してしまうことで起こります。
片麻痺は大脳の運動野の損傷が主な原因です。運動野が損傷すると障害された脳と反対側の半身に片麻痺を発症します。片麻痺の原因である脳血管障害が起きるリスク要因として高血圧や動脈硬化が挙げられます。
片麻痺の症状
脳の役割は左右で変わるため、損傷した脳がどちらかによって出現する症状が変わってきます。それぞれの症状は以下の通りです。
<共通の症状>
- 半身の手足に麻痺やしびれ
- 顔の半分に麻痺やしびれ
- 麻痺側の視野が欠ける
<右脳損傷時の症状>
- 半側空間無視…左側の空間や左側の体の意識が低くなること
<左脳損傷時の症状>
- 失認…物事を理解するのが困難になること
- 失語症…言葉が出ない、文字が書けないなどの症状
- 性格変容…怒りっぽくなる、興奮しやすくなる
日常生活で困ること
片麻痺の症状が出現すると日常生活で困ることも多々あります。どのような時に困難に感じるか具体的に見ていきましょう。
- 呂律が回らないため、うまく話せない
- 麻痺側の口からよだれがでる、食べ物をこぼす
- 手に持ったものを落としてしまう
- 足がもつれて歩きづらい
- バランスがとれず、転倒しやすい
- 着替えがしにくい(ズボン上げ下げ、ボタンをしめるなど)
- 調理や家事が難しい(包丁を使う、瓶もフタをあけるなど)
また、片麻痺は損傷部位によっては麻痺以外にもさまざまな症状が出現します。麻痺以外の症状はないか、注意深く観察することも必要です。
【片麻痺】日常生活で困ることを減らすために必要な治療
片麻痺は適切な治療やリハビリを受けることで、症状の改善が期待できます。また、片麻痺は今まで当たり前にできていたことができなくなるため、精神的なダメージも大きく、メンタルケアも非常に重要です。
適切なリハビリ
片麻痺の治療にはリハビリが欠かせません。従来は麻痺は改善しないとされていましたが、現在は麻痺はリハビリによって回復すると証明されています。回復するためには、早くから適切なリハビリを始めることが重要です。片麻痺の治療は、機能回復を最大限に高めるために、発症後から6ヵ月までに集中的にリハビリを行います。
片麻痺の回復は発症後6ヵ月以内までと言われていますが、中には、6か月を過ぎても回復する方もいらっしゃいます。症状にあったリハビリを諦めずに続けることが大切です。
精神的サポート
片麻痺により日常生活に困ることが増えてしまうことで自信をなくし、ふさぎ込んでしまう患者さんは少なくありません。リハビリは患者さん主体で行うため、メンタルが大きく影響します。
リハビリの専門家や家族がしっかりとコミュニケーションをとり、不安を取り除くことが非常に重要です。また、趣味や地域のイベントなどを通して社会参加することもメンタルケアにおすすめです。
片麻痺でもできる!日常生活で困ることを解決するには
片麻痺が出現しても、生活の工夫をすることで日常生活で困ることを減らし、生活の質(QOL)をあげることが可能です。
さいごにQOLをあげるためにできることを3つご紹介します。
装具や自助具の利用
日常生活で不自由に感じている動作を、自分自身の力で行えるように補助するための道具が装具や自助具です。自分にあった装具や自助具を使うことで、快適に過ごせるようになります。例えば、装具には歩くのが困難な場合に使う「下肢装具」、肩の亜脱臼を防ぐ「肩装具」などを用います。
自助具は生活の細かいことに配慮したアイデア商品です。スプーンやお箸を持ちやすく滑りどめや、片手で包丁が使えるようになるまな板など、生活の中で困ったなという問題を解決してくれます。中には、自助具を100均の材料で手作りしておられる方もいらっしゃいます。
住環境を整える
退院後、自宅で生活することになると、さらに日常生活で困ることに直面します。小さな段差につまづいてしまったり、床で寝ている場合は起き上がるのに時間がかかってしまったりと今までなんとも思わなかったことに不便を感じるでしょう。
家の中で動くのが困難になると、どんどん動かなくなってしまいます。自宅でスムーズに移動できるように住環境を整えることは大切です。手すり設置など、介護のために必要な改修は介護保険が利用できる場合もありますので自治体に相談してみましょう。
専門家のサポートも
さまざまな専門家のサポートを受けることもQOLをあげるために必要です。脳血管障害が原因で片麻痺になった場合、病気の再発の恐れもあるため定期的な検診が必要です。適切なリハビリやメンタルケアなども機能回復のためにも、専門家のサポートが重要となります。
さらに、片麻痺により後遺症が残ると、介護保険や国からの助成金を受けとることができるなどさまざまな制度が存在します。地域によって助成制度が変わるため、地域包括センターや役場の介護相談なども利用しましょう。
まとめ|片麻痺による日常生活に困ることを解決しよう
片麻痺(かたまひ)というのは、体の片側が麻痺して動かなくなることです。この後遺症が残ると、日常生活で困ることがたくさん出てきます。たとえば、今まで普通にできていた着替えや食事、歩くことが難しくなり、悔しい気持ちになるかもしれません。
でも、あきらめないでください。適切なリハビリテーションを受けることで、片麻痺の機能を少しずつ回復させることが期待できます。リハビリでは、専門の先生が体の動かし方や筋肉の鍛え方を教えてくれます。
さらに、装具といって、体をサポートするための道具を使ったり、生活の中で工夫をしたりすることで、生活の質(QOL)を上げることも可能です。たとえば、特別なスプーンやフォークを使って食事をしやすくしたり、家の中に手すりをつけて移動を楽にしたりできます。
片麻痺によって困っていることを解決するためには、家族とよく話し合い、協力することがとても大切です。家族の理解とサポートがあれば、リハビリも頑張れます。
また、患者さんや家族だけで問題を抱えこまないように、いろいろな専門家のサポートを取り入れた体制を作りましょう。