寝たきりによる筋力低下を予防しよう!リハビリの重要性や方法を解説
2025.02.03
ケガや病気が原因で寝たきりの状態が続くと、筋力低下が起きた後の生活に大きな影響を及ぼします。
寝たきりの状態が続くと「どのくらい筋力が低下するのか」「寝たきりでも筋力低下を予防できるリハビリ方法はあるのか」と気になる方も多いのではないでしょうか。
寝たきりの期間が長くなると、筋力低下以外にも体にさまざまな支障をきたすのでリハビリの方法を知っておくことは非常に大切です。
今回は寝たきりによる筋力低下を防止するリハビリ方法と、寝たきりにならないための高齢者向けのリハビリ方法をご紹介します。
目次
寝たきりでも必要?筋力低下防止のリハビリはなぜ重要なのか?
ケガや病気で寝たきりの状態が続くと、再び起き上がることができるのか不安に思いますよね。まずは、寝たきりの状態が体にどのような影響を及ぼすのかみていきましょう。
寝たきりによる筋力低下
寝たきりの期間が長くなればなるほど筋力低下は進む上に、回復にかかる時間も増加します。
体調不良で1日寝たきりになったとすると筋力は3%〜5%低下し、回復するまでに1週間かかると言われています。もし、1週間寝たきりの状態が続き、筋力を一切使わないでいると約20%程度、筋力が低下し、回復するまでに1か月かかると言われています。
また、高齢とともに、筋力は低下していくので20歳からの筋肉量に比べると70歳くらいでは約30%程度筋力が低下します。高齢になり、筋力が低下している上に、寝たきりで一切筋力を使わない状態でいることは非常にリスクが高いのです。
筋力低下によるさらなる問題も…
寝たきりになると、どのような問題点があるのかみていきましょう。
- <廃用性症候群>
廃用性症候群とは長期間に及ぶ過度な安静や寝たきりによって筋力低下や活動性低下が原因で体にさまざまな影響を及ぼす障害です。筋肉が衰えたり、関節が固くなったりする身体機能の低下だけでなく、うつ病やせん妄など精神的にも大きな影響を与えます。
- <サルコペニア>
サルコペニアとは加齢に伴う筋力低下のことを指します。サルコペニアは加齢や疾患により筋肉量や食事の摂取量が減少することが原因と言われています。
「筋力が低下する→運動量が減る→食事量が減る→さらに筋力が低下する」といった悪循環が起きてしまうのです。
- <フレイル>
フレイルとは加齢に伴い心身の活力が低下した状態のことです。サルコペニアが原因の筋力低下の他にも、認知症や閉じこもりなど精神的・社会的な衰弱も意味します。フレイルを発症すると要介護状態に進みやすい傾向があります。
参考:日本内科学会雑誌「超高齢化社会におけるサルコペニアとフレイル」
寝たきりでおこなう筋力低下予防のリハビリ効果と方法について
寝たきりの状態でも筋力低下を予防するためのリハビリ方法はいくつかあります。こんかいは寝たきりでも可能なリハビリを4つご紹介します。
マッサージ
手のひらや指圧で圧迫するようなマッサージはリンパや血液の流れを良くする効果があります。マッサージで皮膚に直接刺激を与え、血液循環をよくして新陳代謝を促すことで、身体機能の低下を予防できるのです。
寝たきりの状態が続くと体を動かす機会が少なくなり、血行不良をおこしやすくなります。筋肉を優しくもみほぐして血液の巡りを良くして筋力低下を予防しましょう。
また、マッサージによって血液循環がよくなることで、拘縮予防にも繋がるので積極的に取り入れましょう。
ストレッチ
ストレッチを行うことで、柔軟性が向上し、運動機能の回復がみられます。また、痛みの改善や血行促進などさまざまな効果も期待できます。定期的にお尻や腰の筋肉などをストレッチで伸ばしましょう。
長時間寝たきりの状態が続くと、筋肉が硬くなり動かしづらくなっているため、無理にストレッチをすると筋肉を痛めてしまうことも。マッサージ後の血流がよくなり筋肉が伸びやすい状態でストレッチを行うと良いでしょう。
関節の曲げ伸ばし
手や足の関節の曲げ伸ばしをすることで、筋力低下を予防します。寝たきりの場合、同じ体勢でいることが多く、膝や腕の関節を伸ばしたままで過ごしてしまいがちです。
手足の関節を曲げ伸ばしすることで、現在の関節の可動域がどのくらいか確認することもできます。また、定期的に行うことで関節の制限を緩和する関節可動域訓練としての効果も期待できます。
手足の筋力トレーニング
患者さんの状態を見ながら動かせるようであれば筋力トレーニングも行っていきます。まずは手や足の指を使って行うグーパー運動がおすすめです。
グーパー運動は名前の通り、手のひらをグーパーしたり、足の指を開いたり閉じたりする運動です。ベットの上でできるので負担も少なく、自主トレにもおすすめの筋力トレーニングです。
早くいろんな動作をしたいと焦ることもあるかも知れませんが、無理をして痛みがでてしまうとトレーニングを中断しなくていけません。体の状態に合わせた筋力とレーニングを行いましょう。
寝たきりにならないために!高齢者向け筋力低下防止のリハビリ方法
寝たきりになってしまうと本人はもちろん、介護をするご家族の体力的、精神的にも負担が大きくなってしまいます。まずは寝たきりにならないために予防することが大切です。
ウォーキングなどの有酸素運動
寝たきりを予防するために、まずは体を動かす習慣を身に着けることが重要です。無理せず続けられるウォーキングや水泳などの有酸素運動がおすすめです。
天気がいい日に散歩にでてみたり、デイサービスやサークル活動などで体操を行ってみてはいかがでしょうか。また、適度な運動は脳の活性化や精神の安定にも効果的です。認知症やうつ病を防止する面でもぜひ身につけたい習慣です。
足腰の筋力トレーニング
寝たきりにならないためには足腰の筋力はとても重要です。そんな足腰の筋肉を効率よく鍛えるためにおすすめする筋力トレーニングがスクワットです。
<スロースクワットのやり方>
- 足を肩幅に広げる
- 3~5秒かけてゆっくりとお尻を下げる
- また、3~5秒かけてゆっくりと立ち上がる
- 3回繰り返す
腰を伸ばした状態で行うのがポイントです。負担が大きい場合は回数を減らすなど無理のない範囲で行いましょう。
まとめ|寝たきりでも行える筋力低下防止のリハビリ方法について
寝たきりの状態が長く続くほど、筋力がどんどん低下してしまい、元の状態に戻るまでに時間がかかります。
そのため、できるだけ早い段階からリハビリや自主トレの方法を知っておくことが大切です。リハビリを行うと筋力の低下を予防できるだけでなく、血液の流れを良くしたり、関節の動きをスムーズにしたりすることにもつながります。
今回ご紹介する筋力低下防止のリハビリ方法は、次の4つです。
- マッサージ
- 筋肉をやさしくほぐして血液の流れを良くします。
- 痛くない程度に、ゆっくり行いましょう。
- ストレッチ
- 体を伸ばすことで、関節の動きがよくなり、けがの予防にも役立ちます。
- 伸ばすときは息をゆっくり吐きながら、無理のない範囲で行いましょう。
- 関節の曲げ伸ばし
- ひざやひじなどの関節を曲げたり伸ばしたりする運動です。
- 使わないと関節がかたくなり、動かしにくくなるため、定期的に行うことが大切です。
- 手足の筋力トレーニング
- たとえば、手で物を握ったり、足首を上下に動かしたりすることで、少しずつ筋肉を鍛えられます。
- 重い負荷をかけず、回数を少しずつ増やしていきましょう。
これらのリハビリをマッサージ → ストレッチ → 関節の曲げ伸ばし → 手足の筋力トレーニングの順番で行うことで、血液のめぐりがより良くなり、一層高い効果が期待できます。
また、寝たきりの状態が続くと、筋力が低下するだけでなく、関節がかたまる「拘縮」や、気分が落ち込むうつ病、物忘れなどの症状が現れる認知症などの精神的疾患も患う可能性があります。これらを防ぐためにも、まずはリハビリを取り入れたり、自分でできるトレーニングを試してみたりして、寝たきりをなるべく防ぐことが大切です。
自分や家族の健康を守るためにも、できることから少しずつ始めてみましょう。もし体に痛みがあったり、うまく動かせない部分があったりする場合は、医師やリハビリの専門家に相談するようにしてください。