
【短下肢装具を検討中の方へ】メリットを生かしデメリットを軽減する方法
2025.03.10

片方の脚に運動麻痺があり、立位・歩行に支障が出る場合は短下肢装具の使用が検討されるかもしれません。短下肢装具にはメリットがある一方で、使い続けるとデメリットと感じる部分もあります。メリットをうまく生かしてデメリットを軽減する方法を知っておくと安心して使い続けられますよ。
この記事では、短下肢装具のメリット・デメリットを解説しながら、装具の基礎知識・費用・効果についてもご紹介します。立ったり歩いたりできると日常生活・趣味・仕事・交友関係の幅が広がるので、より理想の生活に近づきたい方は是非参考にしてください。
目次
短下肢装具とは?メリットとデメリットの前に知っておきたい知識

短下肢装具は、麻痺のある脚に装着します。足の裏から膝の下までを支える形のものが一般的です。しかし、なぜ装着するのかがわからず、費用に不安を抱えたままでは使用し続けるのが難しいですよね。
短下肢装具のメリットとデメリットを知る前に、装具を使う目的や費用について知っておきましょう。
短下肢装具はなぜ必要?
短下肢装具は脚に運動麻痺がある方に以下の目的で処方されます。
- 立った時に足首が左右にぶれないようにするため
- 歩行時に膝が折れたり突っ張ったりしないようにするため
- 歩行時につま先が引っかかるのを防ぐため
立位・歩行時に麻痺側の脚が体重を支えられなかったり、引っかかると転倒の危険があります。歩行能力の獲得・向上を目的として短下肢装具が検討されるのが一般的です。
費用はどのくらいかかる?
自費で短下肢装具を購入すると、2〜10万円(装具の種類による)程度が必要です。しかし、医療保険や補装具費支給制度を利用するとより安い自己負担額で装具を作成できます。
医療保険を利用する場合は、医師の処方や診断書が必要です。補装具費支給制度を利用するには、身体障害者手帳を取得する必要があります。自治体によっては、短下肢装具を作る時に受けられる費用の補助について相談できますよ。
短下肢装具の費用が気になる方は「お住まいの地域+短下肢装具相談」と検索してみてください。お住まいの地域の保健福祉課・相談所の情報が出てきますよ。
参考:KOMPAS慶應義塾大学病院医療・健康情報サイト「装具」
短下肢装具をつけるメリットは?デメリットもある

短下肢装具をつけるともちろんメリットはありますが、使用しているとデメリットと感じる点もでてきます。補助制度を使うと安くなるとはいっても、短下肢装具を使用するならメリットを最大限に活用したいところですね。デメリットも知って、後悔しないような装具を作りましょう。
短下肢装具で歩行速度が上がる
下肢の運動麻痺がある方に対して短下肢装具を使用すると以下の改善が報告されています。
- 歩行速度
- 立位バランス
- 歩行時のエネルギー効率
これは、麻痺がある下肢に短下肢装具をつけると支持性が改善するためです。左右対称の歩き方に近づくため、歩行の速度が向上します。麻痺がある脚で支える時間が長くなると、麻痺がない脚にも負担がかかりにくい点がメリットです。
安定した歩行ができると屋内外での移動の幅が増えるため、外出の機会にもつながります。また、ご自分でできる動作が増えると、患者さん自身の自己肯定感向上にもつながるでしょう。
症状の変化によっては作り替えが必要
プラスチックでできた一体型の短下肢装具があります。安定性はありますが、プラスチック部分が劣化して壊れたり、症状が変化したりする場合は作り替える必要がある点がデメリットです。
また、次のようなデメリットもあります。
- しっかり装着されているか、体にあっているか定期的な確認が必要である
- 服の上から装着する装具は目立つ
- 金属部品がついている短下肢装具は重い
- ずっとつけているわけではないので夜中トイレに行く時などの歩行が不安定になる
参考:脳卒中片麻痺者における短下肢装具装着の影響-歩行分析装置を用いた検討-
短下肢装具のメリットを生かしデメリットを少なくする方法は?

ここまで紹介したとおり、短下肢装具にはメリットもデメリットもあります。短下肢装具には立位や歩行の動作を改善する効果があるため、日常生活や趣味活動を充実させたい方は装具着用がオススメです。メリットをうまく生かして生活をより豊かにするヒントをご紹介します。
動作を改善するためのリハビリを行う
短下肢装具は立位・歩行の安定性向上に役立ちますが、リハビリを継続することが重要です。リハビリにより麻痺側が安定してくると、麻痺していない脚への負担が軽減します。さらに、家でリラックスしている時など装具を外している状況でも安定した歩行ができるとより安全に過ごせますね。
歩行がより安定するように、体幹・下肢の筋力トレーニングができるようなリハビリを続けましょう。運動麻痺のほかに感覚の麻痺がある患者さんは、無意識に体が傾いたり歩行時に左右差がでるといわれています。リハビリを継続して体の機能を維持・向上できると、装具だけに頼らない生活ができる可能性が高くなります。
定期的に専門家にチェックしてもらう
ご自分の体に合っていない短下肢装具を使用し続けると、壊れたり運動機能が改善しなかったりとデメリットがでてきてしまいます。そのため、定期的に専門家のチェックを受けましょう。専門家のチェックや相談を受けられる場所は以下のとおりです。
- 装具が処方になった病院
- 装具を作成したメーカー
- ケアマネージャー
- リハビリスタッフ
疾患によっては医療保険でリハビリが受けられる期間が決まっており、それ以降はリハビリを受けずに生活している方もいらっしゃるでしょう。最近では、自費でリハビリを受けられるサービスがあります。ご自分の持っている短下肢装具が合っているのか、どのようなリハビリを行えばより良い生活に近づくのかなどを相談したい場合は利用してみましょう。
参考:回復期リハビリテーションから、生活期まで、適切な片麻痺患者の短下肢装具および環境への取り組み
まとめ|短下肢装具を検討中の方向け・メリットとデメリット

今回は、短下肢装具のメリット・デメリットについて説明しました。短下肢装具とは、足首やふくらはぎなど、足の一部を支えるために作られた装具(サポート器具)のことです。装具を使うと歩行が安定したり、足への負担が軽くなったりしますが、一方で重さや着脱の手間などの不便さもあります。
このように、メリット・デメリットを知るのは大切ですが、装具の基礎知識や費用、得られる効果についても同時に理解しておく必要があります。たとえば、「どのような素材でできているのか」「どれくらいの期間で作れるのか」「費用はどのくらいかかるのか」など、事前に調べたり専門家に確認してみましょう。
QOL(生活の質)を向上させるために、短下肢装具のメリット・デメリットをしっかり理解することはとても大事です。しかし、装具をつけただけで、すぐに運動機能が劇的に改善するわけではありません。自分の足や体の状態を正しく知り、どのようなリハビリやトレーニングが必要なのかを考えていくことも重要です。そのため、装具を使うかどうか迷っている場合は、まず専門医の判断をあおぎましょう。
費用面で不安があるときは、「お住まいの地域+短下肢装具相談」とインターネットで検索し、地元の保健福祉課や相談所の情報をチェックしてみてください。助成制度や費用を抑える方法など、自分が住んでいる地域ならではのサポートが見つかるかもしれません。
自分に合った選択をするためにも、情報をしっかり集めて、専門医やリハビリのスタッフと相談しながら検討してください。そうすることで、日常生活をより快適に過ごせるようになり、QOLの向上にもつながっていきます。