運動の失調にリハビリが有効? 運動失調症の注意点やリハビリ内容を解説
2023.10.13
近年の高齢化社会において、運動失調症を発症してしまう人が増えています。運動機能が失調してしまうと、運動麻痺がなくても、起立・歩行時にふらついてしまったり、何か物を持つさいにも手が震えてしまうなどの症状を起こしてしまいます。
特に歩く際にふらついていると、日常生活に大きな支障をきたしてしまうので、転倒しないための動きの練習やバランス能力を保つトレーニングが重要です。
今回は、運動の失調にリハビリが効果的な理由やリハビリのさいのポイントについて説明します。
目次
運動失調症はどんな状態?運動調節ができなくなる症状や原因
運動失調症は、病名ではなくさまざまな病気の症状なので、運動失調が疑われる場合はおおもとの病気について知る必要があります。運動失調の原因についてご紹介します。
代表的な小脳の障害|運動失調
運動の失調は、小脳など神経系が障害されることによるふらつき、ろれつが回らないなどの症状があり、リハビリが必要な疾患の総称で、代表的な小脳の障害として知られています。
定義上は、手足の筋肉など意図的に動かすことができる随意筋という筋肉の協調運動の障害で、病気ではなく身体機能の所見のひとつであるため、運動失調の症状が出た原因を知っておく必要があります。
運動調節が難しくなる
日常の生活において、人間の身体は、さまざまな筋肉が調和を保って効率的な運動ができるように調節していることを協調といいます。
しかし、運動の失調症ではリハビリが必要ですが、身体を動かすのに必要な協調の障害により正常な運動機能に混乱があらわれ、筋力があるのにかかわらず運動がスムーズにできなくなります。
運動失調症の種類
運動機能の失調には、上肢で運動失調がおこると手や腕が思うように動かなくなったりなどリハビリが必要な症状がでる病気のなかに「脊髄小脳変性症」があります。
脊髄脳変性症には、遺伝性と孤発性がありますが、遺伝性の場合はほとんどの人が遺伝子検査で原因を見つけることができ、孤発性の場合は、多系統萎縮症や皮質性小脳萎縮症という疾患が原因であることが多いです。
また、小脳梗塞や小脳出血による運動失調では、症状が急に出現したり、前庭神経炎やメニエール病による運動失調はめまいや耳鳴りをともなうことが多いです。
運動機能の失調にリハビリが有効な理由|運動失調の注意点も紹介
運動失調は、リハビリが有効ですが、歩行器などの器具やクッションを活用すると効率が良いです。リハビリをさらに効果的にする方法についても見ていきましょう。
歩行器や杖など福祉用具の使用
運動失調の人は、膝関節や足首の関節を固定することが難しくなるので、歩行する際にもリハビリの一貫として歩行器や杖などの器具を使用することが重要です。
運動失調の症状として足に力を入れられないとか歩くのを止められないなどがあるので、福祉用具を使用することで転倒したり人やモノにぶつからない対策をしましょう。
座位を取りにくいのでクッションを使う
運動失調になると平衡感覚に異常がでることも多く、自分の意思に反して身体がかたむいたり、リハビリのさいに視界が歪んでしまうことがあるので、座ることさえも難しくなり、イスから落ちてしまう場合もあります。
そのため、座位をとる場合にもクッションで支えたり、イスやテーブルの高さを調整したりすると座位を保ちやすくなるので、食事やイスに座る動作を快適におこなうことができます。
筋力を低下させないためにリハビリをしよう
運動失調の人は、思うように身体を動かせない不安から自分から動くことをやめてしまう傾向にあります。
運動失調の人がリハビリもしないで動かないでいると、筋力も低下してしまい廃用症候群を引きおこしてしまう危険もあるので、リハビリを行い、生活に必要な筋肉は保つようにしましょう。
運動の失調に対するリハビリ内容は?小脳の機能の再構築が重要
運動失調のリハビリでは、小脳の機能を再構築するために必要な筋肉の動きや姿勢を知って身体の中枢部から手足の先などの末梢部分へアプローチしていくようなプログラムを進めていくことが重要です。
視覚で代償して運動制御を促通する|フレンケル体操
あお向けになり、目で目視(視覚で代償)しながら運動のコントロールを反復して練習するプログラムを「フレンケル体操」とよび、運動機能の失調のリハビリで有効です。
19世紀に開発された古くからあるリハビリですが、脳の神経回路を促進させ失調を改善させる効果があるため現在でもおこなわれています。
最初はあお向けや座った状態で手足の確認を目でしながら目標とする物に向けて動かし、徐々に立位でのリハビリに移行します。
フレンケル体操のポイントは、集中すること、正確性を重視すること、反復することなので、この3つを意識しながらおこないましょう。
重りを負荷して固有感覚に活力をあたえる
聴覚や視覚が外の情報をキャッチする感覚であるのに対し、運動や動作をしたときに自分の身体がどう動いているのかを感じる感覚を「固有覚」といいます。
この固有覚を刺激して運動制御を促通させる運動の失調症のリハビリが上肢や下肢に重りを負荷する運動です。
上肢なら250g〜500g程度、下肢なら500g〜1kg程度の重りをつけて運動をおこなうことで固有感覚を活性化させたり、運動失調の症状である過剰な動揺を軽減させる効果があります。
上下肢の過剰な運動を妨げる|弾性緊縛帯
上肢や下肢の体幹に近い部分を弾性包帯で圧迫して手足の過剰な動揺をふせぐリハビリは、前述の重り負荷の運動と同じ考え方です。
四肢、体幹の動揺をおさえたり、偏った重心の位置をより正常に近づけて体幹の一部に加わるねじれをもとに戻そうとする反応を誘発することを目的としています。
重り負荷と弾性緊縛帯の両方を用いることで、座位、立位の安定、トイレ動作に改善が見られた例もあります。
無意識的な筋活動を向上する|プレーシング
上肢や下肢を一定の位置で保持させることを「プレーシング」と言いますが、運動失調症になると、円滑なうごきができなくなるばかりか、上肢や下肢を保持できなくなる場合もあります。
そのような無意識に身体の部位を一定に保つための運動の失調症のリハビリとしてプレーシングがあります。
膝を曲げた状態であお向けに寝て腹式呼吸をおこなうのも、お腹まわりの筋肉を発達させて体幹をきたえる運動になるので効果的です。
【参考:J-STAGE「運動失調を呈するー症例に対するアプローチ」】
まとめ:運動機能の失調にリハビリが効果的な理由
運動機能に失調がおこるリハビリで注意すべき点や失調がおこる原因についてご紹介しました。運動失調の症状が重いと生活に支障をきたしますが、適切で質のよいリハビリをおこなうことで症状の改善に期待できます。
リハビリ方法も多様化しているので、杖や車椅子など自分に合う福祉用具を活用したり、自費リハビリなども検討しながら効率よく運動して、退院後の生活を意欲的に過ごせるように工夫しましょう。