高齢者の転倒対策にはバランスをとる練習を!リハビリでバランス機能強化
2023.09.15
年齢を重ねるにつれて、身体のバランスをとる練習をリハビリとして行う人は増えています。
高齢者は、足元の悪い場所が歩きづらかったり、何もない平坦な道でも足をとられたり、常に転倒のリスクが付きまとうため、バランスの練習が重要です。
転倒の恐怖心から外出が億劫になると、自宅に引きこもってしまい、ますます身体機能が低下してしまいます。「少し離れた友人の家へ散歩に…」と、いつでもフットワーク軽く外出できると嬉しいですよね。
この記事では、バランスをとる練習のメリットやリハビリでバランスの機能を取り戻す方法を紹介します。
目次
バランスをとる練習が必要な理由..加齢とリハビリの重要性
バランスをとる練習は、身体機能を取り戻すリハビリとしても効果的です。人間は歩くときに、自然とバランスをとりながら歩いています。
しかし、加齢とともに、歩き方に違和感を覚えたり、若い頃と同じ速度で歩くことが難しくなったりする人も多いでしょう。バランスをとる練習が必要になってくる理由と、加齢と身体機能の関係やリハビリの重要性を解説していきます。
バランスとはどんな機能?
バランスとは、身体の姿勢を安定した状態に保持する能力のことです。さらに、バランスには2つの種類があり、動かない状態をキープする「静的バランス」と、動きながら転倒しないようにキープする「動的バランス」があります。
バランスは、視覚や身体の感覚による情報、三半規管などの情報を元に、中枢神経が情報処理し、骨格筋が動きます。また、この動作を実行できる筋力や、骨の支持力があることも重要です。
高齢者は身体のバランスが悪くなる
加齢によって運動能力や筋力の低下、視覚や三半規管、身体の感覚機能低下などさまざま機能低下が、バランス機能が悪くなる要因になっています。
スポーツ庁の令和2年度体力・運動能力調査報告書全文によると、65〜79歳の「バランス能力及び歩行能力のテスト」では、年齢が高くなるにつれて男女ともに機能が低下するという結果が出ています。例えば、バランス能力が重要である開眼片足立ちでは、65〜69歳は約80秒キープできていますが、70〜74歳では約70秒、75〜79歳では約60秒という低下傾向です。
放っておくと危険…骨折や怪我にも
バランスをとる機能が悪くなると、身体を安定して支えることができず、転倒事故になる場合が多いです。また、動作に遅れが出ることで、打ち所が悪く、骨折や大ケガをしてしまう高齢者は後を絶ちません。
高齢者は、骨粗鬆症や持病など身体にリスクを抱えていることが多いため、回復するのにかなりの時間を要します。完治までいかず、身体が動かしづらくなったり、怪我をかばう他の体の部位に支障が出てしまったり…。怪我をする前と同じ生活に戻ることは容易ではありません。
バランスをとる練習で得られるメリットは?リハビリのポイントも
バランスをとる練習は、高齢者にとって健康のための良いリハビリとなります。日常的に運動を習慣化できている人でも、バランスを意識したリハビリをとり入れると、さらに効果的です。
具体的にはどのようなメリットがあるのでしょうか。リハビリする際のポイントも含めてみてみましょう。
体の歪みが整い肩こり・腰痛の改善
身体は、ただ立っているだけでもバランスをとることが必要です。身体に歪みがある人は、いつの間にか非効率的な筋力や神経を使っています。そうなると、一部に不自然に負荷がかかり、次第に肩こりや腰痛の原因となりかねません。
バランスをとる練習をすれば、身体の歪みを解消しやすくなり、歪みに対してトレーニングやリハビリを重ねることで、肩こりや腰痛の症状改善を目指せます。
スムーズな歩行により広がる行動範囲
歩行バランスに不安がある人は、自ら行動範囲を狭めがちです。バランスの練習は、リハビリとして日常生活の一部としてとり入れると、自然と体が覚えさせることができます。
バランスを鍛えれば、正しいバランス感覚と筋力の使い方によって、不安定な砂利道や段差の多い場所でも、安心して歩けるようになるでしょう。自力で歩行できる範囲が広がれば自信がつき、行動制限なくアクティブに出かけることができます。
理学療法士に付き添ってもらう
バランスをとる練習のポイントは、専門知識がある理学療法士に付き添ってもらった上で行うことです。バランスは、スポーツ運動学では運動神経の要素の1つといわれています。プロに見てもらい、自分の身体に合う必要なリハビリを提案、サポートをしてもらいましょう。
独自の方法や1人で行うと、無理な体勢でケガをしたり、バランスを崩してしまって転倒してしまったりする恐れがありますので、注意が必要です。
バランスをとる練習で身体の機能強化!リハビリの方法を紹介
身体のバランスをとる練習には、いくつかリハビリ方法があります。前述の静的バランスであるバランスを保つ能力や、動的バランスの動きながらバランスを保とうとする能力どちらも鍛えると効果的です。
中でも、簡単にはじめられる代表的なリハビリ方法をご紹介していきます。
バランス感覚を強化…片足立ち
バランスを鍛える練習でもっとも代表的なリハビリは片足立ちです。身体が転倒しないように、何度もバランスを調整することで鍛えていきます。
目を開けた状態で片足を床から5cm離し、30秒キープしましょう。難しい場合は、無理をせず手すりや椅子を使用したり、誰かの補助を受けて行うと安心です。片足立ちが15秒未満の場合は、運動器不安定症と診断される場合があります。これ以上を目標に鍛えましょう。
ステップ練習で筋力アップ
ステップ練習は、動きながらバランスを保つためのトレーニングです。片足立ちに慣れてきたら次のステップとして行いましょう。方法は次の通りです。
①左右片足立ちを行います。(左右30秒ずつ)
②両足で立ち、片方の足を一歩前に出してから元の位置に戻します。(左右10回ずつ)
③今度は片方の足を一歩横に出してから元に戻します(左右10回ずつ)
筋肉を正しく使うことで、転倒しそうになっても上手く足を使いバランスをとることができるようになります。
参考:一般社団法人日本血液製剤機構バランス訓練|メンテナンス体操
骨盤回しでバランスを柔軟に
骨盤回しは、バランスを崩し股関節で体勢を修正する際の、可動域を広げるトレーニングです。腰や股関節だけでなく姿勢の改善にもなります。方法は以下の通りです。
①腰に手を当てて、肩幅に足を広げて立ちます。
②ゆっくり円を描くように腰を動かします。前後左右に、少しずつ円を大きくしていきましょう。(時計回り、半反時計回り10回ずつ)
身体を支える支持基底面が狭いと転倒しやすいので、広い範囲を意識して取り組みましょう。
まとめ
バランスをとる練習をリハビリにとり入れる高齢者は増えています。高齢者はバランスが悪くなり、転倒のリスクがあるため、バランスをとる練習が重要です。バランスとは「静的バランス」と「動的バランス」があり、視覚や三半規管などのさまざまな感覚の情報に影響されて骨格筋が動かされバランスをとっています。加齢とともに機能は低下し、これが原因で転倒し、骨折などの大きな怪我に繋がるケースが多いです。
バランスをとる練習はこのような事故防止に繋がるほかに、身体の歪みが改善されたりスムーズな歩行になれば制限なく行動することができるメリットがあります。練習のポイントは、理学療法士のもとで行うことです。
高齢者でも負担なくできるバランスの練習方法としては、まず片足立ちからスタート。次に、ステップ歩行や骨盤回しなど、少しずつ無理せず行うと良いでしょう。難しいときは、必ず支えのある安全な場所や、誰かに付き添ってもらいながらゆっくり行うことで安心して取り組めます。