動眼神経麻痺で眼瞼下垂?リハビリと専門的な治療で視力低下を防ごう
2024.03.27
「まぶたが上がらなくなる」「物が二重に見える」といった症状が起きた場合「動眼神経(第3脳神経)麻痺」が疑われます。
動眼神経麻痺とは、目の筋肉を動かす神経が麻痺する症候群です。しかし、その原因は脳動脈瘤などによって、目周囲の神経が圧迫されることにより引き起こされます。
脳に関する大きな病気が隠れているかもしれない一方で、それらの原因を取り除いても複視などの後遺症が残ることもあります。その場合はリハビリが必要です。
この記事では、動眼神経(第3脳神経)麻痺による複視のリハビリや治療法について解説します。
目次
動眼神経(第3脳神経)麻痺とは?原因・症状とリハビリについて
まずは、動眼神経(第3脳神経)麻痺が起きる原因・症状とリハビリについて解説します。
動眼神経麻痺の主な原因は脳動脈瘤による圧迫
動眼神経麻痺では、目周囲の筋肉を動かす神経が圧迫されることで麻痺症状が引き起こされます。
目周囲には、複数の筋肉が張り巡らされていますが、中でも動眼(眼球を動かす)に関わる筋肉は以下の6つです。
- 内直筋
- 上直筋
- 下直筋
- 下斜筋
- 上眼瞼挙筋
- 瞳孔括約筋
この6つがうまく動かなくなってしまうのが動眼神経麻痺です。
主な原因は脳出血・脳梗塞による脳血管障害や外傷・動眼神経周辺の腫瘍による圧迫とされています。中でも特に脳動脈瘤による圧迫が多いです。そのため動眼神経麻痺の症状が出た場合、まず頭部MRIなどで精密検査が行われます。
また、まれに糖尿病でも動眼神経麻痺が引き起こされることがあります。
動眼神経麻痺の主な症状
動眼神経麻痺の主な症状は以下の5つです。
症状名 | 主な症状 |
眼瞼下垂(がんけんかすい) | まぶたが重く感じて開けられなくなる |
眼球運動障害 | 眼球が外側・下側にしか動けなくなる |
麻痺性外斜視 | 麻痺していない方の目の筋肉が動いてしまう外斜視 |
複視 | 物が二重に見える |
瞳孔散大 | 瞳孔の見た目が通常より大きく見える |
中でも眼瞼下垂・眼球運動障害・麻痺性外斜視・瞳孔散大は他人から見てもわかりやすいかもしれません。
しかし、複視に関しては見た目だけではなかなか判断しづらい症状です。それでも本人は見えづらさを感じるため、生活において強い不快感を抱くようになります。
リハビリで治る?
動眼神経麻痺の主原因は動眼神経の圧迫です。そのため、まずは動脈瘤など主原因となる病気を取り除かなければいけません。
原因を取り除くと数週間で動眼神経の圧迫は和らいでいき、動眼神経麻痺の症状も出なくなります。
ただし、複視の症状が出ていた場合、原因を取り除いた後も複視が残る場合もあるため注意が必要です。
複視が残った場合は動眼神経のリハビリをします。リハビリを行っても半年以上複視が残るのであれば、手術を行うことが多いです。
【参考:時事メディカル「全身の病気が目に現れる~部位により自己免疫疾患も~」】
動眼神経麻痺はリハビリで治る?治療法とリハビリ内容
ここからは、動眼神経麻痺が残ってしまった場合のリハビリ内容について解説します。
動眼神経麻痺の治療の前に…
まず、動眼神経麻痺が疑われた場合は主原因の病気を直すのが最優先となります。基本は主原因が治ると動眼神経麻痺の症状が出なくなることが多いからです。
また、主原因として多いのは脳の病気として深刻な脳動脈瘤です。特に脳動脈瘤や脳梗塞・脳卒中には「治療のゴールデンタイム」があるとされています。
早急に処置しなければ死亡リスクが高まるため、まずは動眼神経麻痺の原因を取り除くことから始まります。
糖尿病性動眼神経麻痺の場合は、治療後に自然に治ることが多いです。いずれにしても原因となる病気を治療することから始まります。
動眼神経麻痺自体は自然に治ることも
動眼神経麻痺は、動眼神経を圧迫している原因を取り除くと、自然に治ることが多いです。ただし、複視や眼球運動障害は残ってしまうことがあります。
複視はリハビリやトレーニングである程度改善が期待できます。そのため、複視が残る場合はまずは眼科医に相談しましょう。
半年以上の複視や眼球運動障害が残ってしまった場合は手術を行うことがあります。
もし複視が残ったら…動眼神経麻痺の治療後リハビリとは
動眼神経麻痺の原因を取り除いても複視が残ってしまった場合、どんなリハビリを行うのでしょうか?ここでは、複視のリハビリについて解説します。
動眼神経麻痺で起きる複視の症状
動眼神経麻痺の複視は、両目で見た時に物が二重に見える症状です。片目だけで見たときには複視が起きないのが特徴です。
そのため、片目だけで複視が起きることはありません。片目だけでも複視が起きる場合、乱視や白内障などが疑われます。
また、複視と一緒に眼瞼下垂などを伴っている場合は、まだ原因の治療が終わっていない可能性があります。医師の指示に従うようにしましょう。
複視に対応可能な目のリハビリ
複視のリハビリは、主に2種類のトレーニングを行います。
まずは「動きにくい方の眼を動かすトレーニング」です。複視は、片方の眼の動きが悪くなっていることで起こります。動きが悪い方の眼だけを動かすようにして、眼の筋肉を活性化させるのが狙いです。
2つ目は「両眼で見るトレーニング」です。実は、動きにくい方の眼だけを動かしているつもりでも、動く方の眼も動きます。人間の眼には「脳からの命令が両眼に同じだけ伝わる」という性質があるためです。そのため、両眼で見るトレーニングも並行して行います。
また、矯正器具の1つである「プリズム眼鏡」を用いることもあります。プリズム眼鏡のレンズは光の進路を屈折させるため、左右の視線のずれを矯正することが可能です。この眼鏡で複視が和らぐこともあります。
複視が強く長引く場合は手術も検討
動眼神経麻痺の原因も取り除き、それでも複視が6ヶ月以上残った場合は手術を行います。複視の手術は、眼球を動かす筋肉の位置を変えることで症状を改善するのが狙いです。
基本的には局所麻酔かつ日帰り手術で行われます。ただし、成人でもまれに全身麻酔を使うことがあります。
手術ではまず、外眼筋(目を動かす筋肉)の位置をずらし、目の位置(眼位)を改善します。状況によっては筋肉を眼球の付着部から切り離し、筋肉を短くしたり後ろにずらしたり、様々な手法がとられることも。
また、手術して眼位が戻っても、日が経つにつれ少しずつずれていくことがあります。その際は検査を行いつつ再手術を行います。
まとめ:動眼神経(第3脳神経)麻痺で複視が起きたらリハビリを
動眼神経麻痺は、原因となる脳動脈瘤や脳卒中などの症状が和らぐと、自然に快癒していくことが多い病気です。
しかし、まれに後遺症として複視などの症状が残ることがあります。動眼神経麻痺の複視が残ったら、眼科医に相談してリハビリを行いましょう。
リハビリでは「動かない方の眼を動かすトレーニング」と「両眼で見るトレーニング」の2種類を行います。また、症状が軽い場合はプリズム眼鏡で屈折率を調整し、症状を和らげることも。
改善しない場合は手術が必要です。複視が残ったら、まずは眼科医に相談するようにしましょう。