Q.
短下肢装具(AFO)とはどのようなものですか?
短下肢装具(AFO: Ankle Foot Orthosis)は、足関節や足部に障害のある患者さんの歩行機能を改善するために用いられる装具です。脳卒中や脳性麻痺、脊髄損傷などの様々な疾患により、足関節の動きが制限されたり、足部の変形が生じたりすることがあります。AFOは、これらの問題に対応し、歩行の安定性と効率を高めることを目的としています。
短下肢装具の主な目的は、足関節の安定性を確保し、足部のアライメントを適切に保つことです。足関節の背屈や底屈が制限されると、歩行時につまずきや転倒のリスクが高まります。短下肢装具は、足関節を中立位に保持することで、これらのリスクを軽減します。また、足部の内反や外反、尖足などの変形を矯正し、体重の適切な分散を促すことも、短下肢装具の重要な役割です。
また、短下肢装具は、下肢の筋力低下を補うことでも歩行機能の改善に寄与します。脳卒中などによる片麻痺では、下肢の筋力低下が歩行の障害となることがあります。短下肢装具は、足関節の背屈を制限することで、遊脚期の足のクリアランスを確保し、つまずきを防ぎます。立脚期では、短下肢装具が足関節を安定させることで、下肢の支持性を高めます。
短下肢装具には、様々な種類があり、患者さんの状態や目的に応じて選択されます。大きく分けると、既製品とカスタムメイドの2つに分類されます。既製品の短下肢装具は、あらかじめ用意されたサイズから適切なものを選ぶタイプです。比較的安価で、すぐに使用できるのが利点ですが、フィット感や機能面では制限があります。
一方、カスタムメイドの短下肢装具は、患者さん一人ひとりの足型に合わせて作製される装具です。より高い適合性と機能性が期待できますが、作製に時間とコストがかかります。カスタムメイドのAFOは、患者さんの症状や目的に合わせて、材質や形状、関節の可動域などを細かく調整することができます。
短下肢装具の具体的なタイプとしては、プラスチック製の固定式AFOや、金属支柱とプラスチックカフで構成されるタマラック式AFO、足関節の可動域を調整できるヒンジ付きAFOなどがあります。また、足部の形状に合わせた内側支柱付きAFOや、足関節の背屈を補助するための弾性バンドを用いたAFOなど、様々なバリエーションが存在します。
短下肢装具の選択や調整には、医師や義肢装具士、理学療法士などの専門家の関与が不可欠です。患者さんの状態を詳細に評価し、適切なAFOを処方することが重要です。また、短下肢装具の使用開始後も、定期的なフォローアップを行い、必要に応じて調整や修正を加えていく必要があります。
短下肢装具は、足関節や足部に障害のある患者さんの歩行機能を改善する上で、非常に有用な装具です。足関節の安定性の確保、足部のアライメントの矯正、下肢の筋力低下の補助など、様々な目的に応じて使い分けられます。既製品とカスタムメイドの選択肢があり、患者さん一人ひとりに合わせた最適なAFOの提供が可能です。医療専門職との緊密な連携の下、適切な短下肢装具を活用することで、患者さんのQOLの向上と社会参加の促進が期待できるでしょう。