Q.
脳梗塞の回復期から維持期のリハビリについて教えてください。
脳梗塞の回復期リハビリは、発症から約3ヶ月~6ヶ月の間に行われるリハビリテーションを指します。この時期は、脳の可塑性が最も高まる時期であり、積極的なリハビリを行うことで、大きな機能回復が期待できます。
回復期リハビリの主な目的は、日常生活動作(ADL)の自立と社会復帰です。具体的には、以下のような訓練を行います。
- 基本動作訓練:起き上がり、座位保持、立ち上がり、歩行などの基本的な動作の訓練。
- ADL訓練:トイレ動作、更衣動作、入浴動作、食事動作などの日常生活に必要な動作の訓練。
- instrumental ADL(IADL)訓練:調理、掃除、洗濯、買い物などの家事動作の訓練。
- 高次脳機能訓練:記憶、注意、言語、遂行機能などの認知機能の訓練。
- 社会適応訓練:職場復帰や社会参加に必要なスキルの訓練。
これらの訓練は、作業療法士や理学療法士、言語聴覚士などの専門職が中心となって行います。訓練の際は、患者の障害の程度や回復の状況に合わせて、難易度を調整していきます。
回復期リハビリでは、1日数時間、週5日以上の集中的なリハビリが行われます。この時期は、脳の可塑性が高まっているため、集中的なリハビリを行うことで、大きな効果が期待できるのです。
また、回復期リハビリでは、ロボット療法や電気刺激療法、ボツリヌス療法などの最新の治療技術も活用されます。これらの療法は、従来のリハビリでは改善が難しかった重度の麻痺に対して効果が期待できます。
- ロボット療法:ロボットスーツを用いて、麻痺した手足の運動を補助する療法。
- 電気刺激療法:麻痺した筋肉に電気刺激を与えることで、筋力の維持・向上を図る療法。
- ボツリヌス療法:ボツリヌス毒素を筋肉に注射することで、痙縮(筋肉の異常な緊張)を緩和する療法。
回復期リハビリを経て、症状が安定してくると、維持期リハビリへと移行します。維持期リハビリは、回復した機能を維持・向上させることを目的として、主に外来や在宅で行われます。
維持期リハビリでは、自主訓練を中心に、週1~2回程度の頻度で行われます。自主訓練では、セラピストから指導を受けた訓練メニューを、患者自身が自宅で行います。この際、家族の協力が得られると、訓練の継続性が高まります。
また、維持期リハビリでは、生活環境の調整も重要です。脳梗塞の後遺症により、住宅内の段差や手すりの位置が適切でないと、転倒のリスクが高まります。そのため、作業療法士などの専門職が、患者の自宅を訪問し、生活環境を評価・調整することがあります。
維持期リハビリの効果としては、以下のようなものが期待できます。
- ADLの維持・向上
- IADLの維持・向上
- 社会参加の促進
- 転倒予防
- 合併症の予防
特に、社会参加の促進は、患者のQOL向上に大きく貢献します。脳梗塞の後遺症により、仕事や趣味、交友関係などが制限されると、患者は心理的に大きな影響を受けます。維持期リハビリでは、患者の社会参加を支援することで、心理的な安定を図ることができるのです。
ただし、維持期リハビリの効果は、患者の意欲や家族の協力、社会資源の活用などによって大きく異なります。セラピストは、患者や家族と密にコミュニケーションを取り、適切な目標設定とサポートを行うことが求められます。