Q.
脳卒中の後遺症で歩行が困難な場合、どのようなリハビリが有効ですか?
脳卒中の後遺症で歩行に影響が出る場合、片麻痺という症状を伴うことが多いです。片側の手足に力が入らず、まひが生じる状態です。この場合、バランスを取りながら歩くことが難しくなります。そこで、片麻痺に特化したリハビリが必要になってくるのです。
まず重要なのが、まひした側の足に体重をかける練習です。体重をかけることで、足に適度な刺激が与えられ、神経と筋肉の連携が改善されていきます。平行棒の中で片足に体重を乗せたり、まひした側に重心を移動させたりするトレーニングから始めましょう。
また、麻痺側の足を前に出す歩行練習も欠かせません。健側の足を一歩出したら、次はまひした側の足を前に出す。この動作の繰り返しを身につけることが、スムーズな歩行への第一歩となります。
さらに、長下肢装具(KAFO)や短下肢装具(AFO)の使用も検討すべきでしょう。これらの装具は、まひした足の動きをサポートし、安定した歩行を可能にします。リハビリ初期の段階から積極的に活用することで、正しい歩き方の習得が早まるのです。
加えて、杖歩行の練習も重要です。まひの程度に合わせ、4点杖や ロフストランド杖などを使い分けます。杖を正しく使う歩き方のパターン(杖歩行パターン)を身につけることで、安全で効率的な移動が可能になります。
ただし、脳卒中の後遺症としての歩行障害は、単に足の問題だけではありません。バランス感覚の低下や、空間認知の問題など、脳の機能全体に起因することも少なくないのです。
だからこそ、身体面だけでなく、認知面のアプローチも欠かせません。例えば、障害物を避けながら歩く練習や、狭い場所を通り抜ける練習など、実際の生活環境を想定したトレーニングも必要。認知機能の回復と歩行能力の向上を、バランスよく図っていくことが大切なのです。
また、リハビリの過程では、ご家族のサポートも重要な役割を果たします。日常生活の中で、歩行の機会を増やすためのサポートを。段差の解消や、手すりの設置など、歩きやすい環境づくりも大きな助けになるはずです。
脳卒中からの歩行の回復は、決して平坦な道のりではありません。しかし、適切なリハビリと周囲の支えがあれば、必ず一歩ずつ前進できるはず。「あきらめない」という強い意志を持ち続けること。それが、歩行の回復への何より大切な原動力だと、私は信じています。