自分の足で、もう一度。リハビリで歩く力を取り戻すために知っておきたいこと
2025.12.24
大きなケガや病気を経験すると、「以前のように歩けるようになるのだろうか」と、ふとした瞬間に不安がよぎることもあるかと思います。ベッドで過ごす時間が長くなると、どうしても足の筋力は落ちてしまいますが、焦る必要はありません。
リハビリを通して、歩くために必要な筋肉を一つひとつ動かしていくことは、自分でできることを増やし、毎日を前向きに過ごしていくための確かな一歩になります。今回は、リハビリの具体的な進め方や、筋力を取り戻すことで広がるこれからの生活について、現場の視点でお伝えします。
目次
状態に合わせて無理なく。回復を支えるリハビリの種類と道具

リハビリは、今のあなたの体の状態を確認しながら、最も安全な方法から始めていきます。決して一人で頑張るのではなく、専門の器具を使いながら着実に力をつけていきましょう。
1.安定した場所で「立ち上がる力」を養う基礎訓練
まずは、転倒の心配がない手すりや平行棒のある場所で、体を支える土台を作ります。
- 立ち座りの練習
手すりをしっかり握り、ゆっくり腰を浮かせ、ゆっくり座る。この地道な繰り返しが、歩くための「踏ん張る力」を育てます。 - 平行棒での歩行
バーを支えにしながら、左右の足にじわっと体重を乗せる感覚を確かめていきます。 - 向きを変える練習
バランスを崩さないよう、スムーズに体の向きを変えるコツを体に覚えさせます。
2.活動の範囲を広げてくれる歩行補助具の活用
少しずつ足に力が戻ってきたら、自立を助けてくれる道具を味方に付けていきましょう。
| 器具の名前 | 特徴・メリット | 向いている方 |
| ピックアップ式歩行器 | 4本の脚で体を囲むため、最も安定する。 | 室内でゆっくり、確実に移動したい方 |
| 前輪付き歩行器 | 前輪で転がして進める。持ち上げる力が不要。 | 腕の力が弱く、スムーズに歩きたい方 |
| 歩行車(4輪タイプ) | すべてに車輪があり、座面やブレーキ付き。 | 外歩きを楽しみたい方、途中で休憩したい方 |
少しずつ足に力が戻ってきたら、自立を助けてくれる道具を味方に付けていきましょう。
- 安定感のある「歩行器」
体を囲んで支えるピックアップ式は、室内での移動にとても安心です。 - スムーズに進める「キャスター付き」
腕の力が弱くても、キャスターを転がして楽に前へ進めるタイプもあります。 - 休憩もできる「歩行車」
外歩きの途中で疲れても、座面でひと休みできるので、お出かけの強い味方になります。
3.麻痺がある方の歩行を支える専門的な工夫
脳卒中の後遺症などで片側に麻痺がある場合も、その方に合った特別なサポートがあります。
- 支えやすい杖の選択
4点杖など、ふらつきを抑えてくれる最適な相棒を選びます。 - 正しいリズムの習得
杖と足を出す順番(三動作歩行など)を、リズムよく練習していきます。 - 装具の活用
足首を固定する装具を付けることで、足が出しやすくなることもあります。
筋肉が戻ることで、毎日の景色はこう変わる

リハビリを続けて足の筋肉がしっかりしてくると、単に「移動が楽になる」以上の変化が暮らしの中に現れます。
誰かに頼らず「自分でできる」という自信
「起きる・立つ・歩く」という基本ができるだけで、食事やトイレなどの日常動作が劇的にスムーズになります。自分自身の力で動ける手応えは、毎日を前向きに過ごす大きな力になります。
「寝たきり」や思わぬケガのリスクを減らす
特にお年寄りの場合、早めにリハビリを始めることが寝たきり防止の近道です。筋肉を呼び覚ましておけば、転倒や再骨折の不安も減り、心にゆとりが生まれます。
回復した後も続く「自分に合った運動習慣」
リハビリスタッフは、家でも無理なく続けられるメニューを一緒に考えてくれます。これを習慣にすることで、ついた筋肉を長く維持でき、将来の健康を自分で守ることにつながります。
足だけじゃない。歩行を影で支える「体幹」の力

「歩くには足の筋肉さえあればいい」と思われがちですが、実はお腹の奥にある「体幹(インナーマッスル)」も重要な役割を果たしています。
| 期待できる効果 | 具体的な変化 |
| 関節が動きやすくなる | 股関節などが正しい位置で動き、歩行時の痛みが和らぐ。 |
| 姿勢が若々しくなる | 背筋がピンと伸び、左右のふらつきが抑えられる。 |
| 腰・膝の負担軽減 | 重心移動がスムーズになり、無理な力がかからなくなる。 |
「歩くには足の筋肉さえあればいい」と思われがちですが、実はお腹の奥にある「体幹(インナーマッスル)」がとても重要な役目を果たしています。
関節の痛みが和らぎ、動きがスムーズになる
体幹がしっかりすると、股関節などの関節が正しい位置でスムーズに動くようになります。その結果、歩く時の痛みが軽減したり、動かせる範囲が広がったりする効果が期待できます。
背筋がピンと伸びて、見た目も若々しく
姿勢を支える筋肉が整うと、自然と背筋が伸びます。正しい姿勢はバランスを保ちやすくするだけでなく、周りの人からも「元気そう」と言われるようになり、気持ちまで明るくなります。
腰や膝への負担が軽くなる
体幹が安定して無駄な力みが取れると、重心移動がスムーズになります。すると、これまで腰や膝にかかっていた無理な負担が減り、長年の悩みが解消されることも少なくありません。
FAQ:リハビリについてよくある質問

Q1.リハビリはいつから始めるのがいいですか?
A.一般的には、手術や発症後、お医者さんの許可が出たらなるべく早く始めるのが理想です。早い段階で体を動かすことが、その後の回復を大きく左右します。
Q2.歩けるようになったら、リハビリはやめてもいい?
A.筋肉は使わないとまた衰えてしまいます。リハビリで教わった自主トレーニングを、無理のない範囲で日常的に続けていくのがコツです。
Q3.どんな歩行器を選べばいいか迷っています。
A.使う場所(家の中か外か)や、今の腕・足の力によって最適なものは違います。リハビリスタッフと一緒に、実際に試しながら決めるのが一番です。
Q4.麻痺があっても本当にまた歩けますか?
A.麻痺の程度は人それぞれですが、適切な杖や装具を使い、正しい歩き方のコツを練習することで、多くの方がご自身のペースで歩行を再開されています。
Q5.足の筋トレだけではダメなのですか?
A.足の筋力も大切ですが、体幹を鍛えることで「ふらつき」が抑えられます。全身のバランスを整えることが、安全に歩き続けるための近道です。
まとめ:あなたのペースで、また一歩踏み出すために

病気やケガで歩きにくさを感じると、「もう以前のようにはいかない」と諦めてしまいそうになるかもしれません。ですが、適切なリハビリと前向きな気持ちがあれば、失いかけた力を取り戻すパワーが備わっています。
足の筋肉を鍛えることはもちろん、体幹を整えて体の軸をしっかりさせることで、痛みや転倒の不安を減らし、正しい姿勢で歩けるようになります。それは、誰かに支えられる毎日から、自分の足で好きな場所へ向かう毎日への大きな一歩になるはずです。
まずは一人で抱え込まず、専門家に今の不安を話してみてください。あなたの状態に合わせたメニューが、新しい生活への扉を開いてくれます。
焦らず、一歩ずつ、また笑顔で外の空気を吸いに行ける日を一緒に目指していきましょう。




