MASは筋緊張の評価スケール!MASの特徴や評価方法やデメリット
2024.05.07
MAS(Modified Ashworth Scale)は、脳血管障害などの疾患により生じる筋緊張の程度を評価するための方法の1つです。特に、痙縮(けいしゅく)の症状を抱える患者さんに対する検査として広く活用されています。
MASは筋緊張の評価スケールとして一般的ですが、評価方法には細かな規定があります。そのため、評価方法や結果の解釈に困惑する方もいるかもしれません。
そこで今回は、以下の点についてわかりやすく解説します。
- MASの評価方法と特徴
- MASのデメリット
- 筋緊張が引き起こす痙縮の症状
- 痙縮の治療法
MASについて理解を深めることで、リハビリテーションや理学療法の現場で、より適切に活用できるようになるでしょう。また、筋緊張や痙縮に関する知識を身につけることで、患者さんへのサポートの質を高めることができます。
ぜひ、この記事を通じてMASと筋緊張、痙縮について学んでいきましょう。
目次
MASは筋緊張の評価方法の1つ!異常筋緊張で起こる「痙縮」とは
MASは異常筋緊張がもたらす痙縮の評価スケールとして、広く活用されています。まずはMASとはどのようなものか、また痙縮の症状についても詳しくお伝えします。
MASとは
MASとはModifiedAshworthScaleの略です。1964年に5段階で痙縮を評価する方法としてアシュワーススケール(AshworthScale)が発表されました。1987年に、さらに1段階加えて6段階の評価に修正されたもの、ModifiedAshworthScale(MAS)が作成され、世界で最も活用される評価スケールとなりました。
MASの痙縮の評価は信頼性も高く、特別な道具や検査も必要とせず簡単に行えるため、日本でも多くの臨床の場で活用されています。
痙縮の症状
MASで評価する痙縮の症状についてみていきましょう。痙縮とは運動障害の1つで、筋肉が緊張しすぎて手足が動かしにくかったり、勝手に動いてしまったりする状態のことです。
脳や脊髄の病気により、「筋肉を収縮させる指令」と「筋肉を緩ませる指令」が上手に伝わらなくなってしまうことが原因とされています。
主な症状としては「手指が握ったままとなり開きにくい」「ひじが曲がる」「足先が足の裏のほうに曲がる」などが挙げられます。
痙縮の原因となる疾患
痙縮は、様々な疾患や状態によって引き起こされることがあります。その主な原因となる疾患を以下にまとめます。
- 脳血管障害…脳卒中や脳梗塞などの脳血管障害は、脳の特定の領域に障害を引き起こし、筋緊張の亢進や痙縮を引き起こすことがあります。
- 脊髄損傷…脊髄損傷によって、脊髄に対する損傷や圧迫が生じることで、下位の神経回路に異常が生じ、痙縮が発生することがあります。
- 神経変性疾患…アルツハイマー病、パーキンソン病、筋萎縮性側索硬化症(ALS)などの神経変性疾患は、神経の変性や損傷によって筋緊張の亢進や痙縮を引き起こす可能性があります。
- 脳性麻痺…出生前、出生時、もしくは乳幼児期に脳に損傷が生じることで、脳性麻痺が発症し、筋緊張の亢進や痙縮が特徴的な症状として現れることがあります。
- 運動ニューロン疾患…運動ニューロン疾患には、筋萎縮性側索硬化症(ALS)や運動ニューロン病などが含まれ、これらの疾患によって運動ニューロンが損傷されることで、筋緊張の亢進や痙縮が発生することがあります。
【MASの評価方法】筋緊張の評価で広く活用される理由や欠点とは
MASは筋緊張の評価に用いられる指標の1つですが、具体的に活用されている理由をみていきましょう。欠点となる部分も知っておくことで効果的に用いることができます。
MASの特徴
まず、MASの特徴として「シンプルさ」が挙げられます。MASは単純な5段階のスケールであり、筋肉の緊張度を評価する際に使いやすい特徴があります。
また、医療機関やリハビリ施設では一般的に用いられており、周知されていることも特徴の1つです。MASは筋緊張を評価する際に、主観ではなく客観的な評価が可能で、広く用いられる理由として「客観性」という部分も挙げられるでしょう。
MASの評価方法
MASの評価方法は以下の通りです。
- 患者の準備→患者はリラックスした状態で横になります。
- 関節の可動域の確認→関節の可動域を確認し、筋肉の緊張を評価するための基準とします。
- 筋肉の収縮の評価→評価者は特定の筋肉を刺激し、その筋肉の収縮や反応を観察します。
- MASの評価→MASは0から4の5段階で筋肉の緊張を評価します。0は筋肉の収縮がない状態を示し、4は筋肉の収縮が非常に強い状態を示します。
MASのデメリット
MASの筋緊張をはかる評価方法の1つですが、万能というわけではなく多少のデメリットがあります。
- 主観性の影響…MASは一定の客観性を持ちますが、評価者の主観的な判断に影響されることがあります。
- 重度の筋緊張の評価が難しい…MASは軽度から中等度の筋緊張を評価するのに適していますが、重度の筋緊張の評価には不向きです。
- 複雑な筋緊張の評価には不十分…MASは筋緊張を単純に5段階で評価するため、筋緊張の複雑なパターンや特性を詳細に評価することが難しい場合があります。
これらのデメリットを考慮しながら、MASは依然として広く使用される筋緊張の評価方法の一つです。
【MAS評価を生かす】筋緊張の亢進がみられたら…治療やリハビリを
MAS評価は筋緊張を評価するだけでなく、治療やリハビリに活かすことが求められます。治療方法やリハビリ方法を理解し、効率的に改善を目指しましょう。
痙縮の治療方法について
筋緊張の亢進を示す痙縮の治療法は、「薬物療法」「神経ブロック」「ボツリヌス毒素注射」などが挙げられます。
薬物療法は一般的で、筋緊張を緩和するために抗痙縮薬が使用されることがあります。例えば、バクロフェンやダンタロールなどの筋弛緩剤が処方されることがあります。神経ブロックの場合は、痙縮を起こしている神経に対して、神経ブロックを行うことで筋緊張を抑制することが可能でしょう。
機能回復にはリハビリも
痙縮は治療だけでなく、機能回復のためにリハビリテーションも重要です。
例えば、筋力トレーニング。周囲の筋肉を強化し、関節の安定性や機能を向上を目指しましょう。並行して可動域訓練も行い、関節の可動域を改善するための訓練を行います。日常生活での動作の幅を広げることができます。
リハビリ中は転倒による怪我も想定されるためバランス訓練も重要です。MASなどの筋緊張の評価結果を元に、個々の患者に適した治療法やリハビリテーションプログラムを立案し、機能の回復や生活の質の向上を目指しましょう。
まとめ|MAS(筋緊張の評価方法)について
今回は、MASによる筋緊張の評価方法について詳しく解説しました。MASは客観的な評価基準を提供し、その結果は治療やリハビリテーションに活かされています。多くの病院やリハビリ施設で用いられているMASは、非常に一般的な評価スケールです。患者さん自身もMASについて理解しておくことで、自分の状態を把握し、リハビリに積極的に取り組むことができるでしょう。
リハビリの主体は患者さん自身ですが、周囲のサポートや協力によって、その効果は何倍にも高めることができます。医療スタッフや家族、友人などのサポートを受けながら、正しい方法でリハビリテーションを行うことが大切です。
円滑なリハビリと正しい実施方法を心がけることで、より良い改善を目指すことができるでしょう。MASによる評価を理解し、自分自身の状態を把握することが、リハビリの第一歩となります。
自分自身と周囲の人々との協力を大切にしながら、一歩一歩着実にリハビリテーションに取り組んでいきましょう。少しずつでも、確実に改善していくことが、最終的な目標達成につながります。