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脳性麻痺の大人に多い二次障害とその予防方法は?
脳性麻痺は、出産前後に脳の損傷が起きることで発症する運動機能障害です。脳性麻痺で損傷した脳の機能は回復することがないため、大人になっても継続的にリハビリを行う必要があります。特に、20代以降になると、二次障害に悩まされる人が少なくありません。
脳性麻痺の大人に多い二次障害として、以下のようなものがあります。
- 頚椎症: 首の骨や関節の変性によって、神経が圧迫され、手のしびれや痛みなどの症状が現れる。
- 頸肩腕障害: 肩や腕の筋肉の緊張やこりによって、痛みや運動制限が生じる。
- 脊柱側弯症: 背骨が曲がることで、姿勢の異常や痛みが生じる。
- 変形性股関節症: 股関節の軟骨が磨耗し、痛みや可動域制限が生じる。
- ポストリオ症候群: 脳性麻痺の後遺症として、筋力低下や疲労感が進行する。
これらの二次障害は、脳性麻痺の障害自体が進行するのではなく、加齢や日常生活における負担の蓄積によって起こります。特に、不良姿勢や過度な筋緊張、運動不足などが原因となることが多いです。
二次障害を予防するためには、以下のような方法が有効です。
- 定期的なリハビリ: 理学療法士や作業療法士による、関節可動域の維持や筋力強化、姿勢の改善などを目的としたリハビリを受ける。
- 適切な姿勢の保持: 日常生活の中で、できるだけ良い姿勢を保つように心がける。必要に応じて、装具や座位保持装置などを使用する。
- ストレッチや関節可動域訓練: 自宅でも、定期的にストレッチや関節可動域訓練を行い、筋肉の柔軟性を維持する。
- 適度な運動: 脳性麻痺の程度に応じて、適度な運動を行う。水中運動やヨガなど、関節への負担が少ない運動が適している。
- 生活環境の整備: 机や椅子の高さを調整したり、手すりを設置したりするなど、生活環境を整備することで、身体への負担を軽減する。
二次障害の予防には、日頃からの心がけが大切です。しかし、症状が現れた場合は、早めに整形外科やリハビリテーション科を受診し、適切な治療を受けることが重要です。
脳性麻痺の二次障害は、QOLを大きく低下させる可能性があります。痛みや運動制限によって、仕事や趣味、社会参加が難しくなることもあります。そのため、二次障害の予防は、脳性麻痺の大人にとって重要な課題といえます。
リハビリテーションは、二次障害の予防だけでなく、すでに生じてしまった症状の改善にも有効です。例えば、関節可動域の維持・改善や、筋力強化、疼痛管理などを目的としたアプローチを行います。また、日常生活動作の改善を目指したアプローチも重要です。
リハビリテーションを行う際は、脳性麻痺の特性を理解している専門職との連携が欠かせません。医師、理学療法士、作業療法士、言語聴覚士などの専門職が、それぞれの視点から評価を行い、目標を設定します。そして、患者さん一人ひとりに合わせた個別のプログラムを立案し、実施していきます。
また、リハビリテーションは、単に身体機能の改善だけを目指すものではありません。脳性麻痺の大人は、長年にわたる障害との付き合いの中で、さまざまな心理的な課題を抱えていることもあります。リハビリテーションの中では、こうした心理面のサポートも重要な役割を果たします。
二次障害の予防とリハビリテーションは、脳性麻痺の大人が、豊かな人生を送るために欠かせない取り組みです。障害とうまく付き合いながら、自分らしく生きていくためのサポートが、医療・福祉・教育などの幅広い分野で求められています。
脳性麻痺の大人が、適切なリハビリテーションを受けるためには、成人期の脳性麻痺に対応できる医療機関を見つけることが重要です。しかし、現状では、そうした医療機関は十分に整備されているとはいえません。多くの脳性麻痺の大人が、小児期からの主治医を頼りに、成人期の医療を受けているのが実情です。
今後は、成人期の脳性麻痺に対応できる医療機関の整備と、医療・福祉・教育などの分野が連携した包括的な支援体制の構築が求められます。そして、脳性麻痺の大人が、生涯にわたって質の高い医療とリハビリテーションを受けられる環境を整えていくことが重要です。