【寝たきり予防にも!】フレンケル体操:誰でもできる簡単運動療法の内容と注意点
2024.02.19
フレンケル体操とは小脳性失調症に対して用いられる運動療法です。小脳が障害されることで起こる運動失調は運動に関係する様々な動きの協調性が悪くなり、円滑に出来なくなる疾患です。
フレンケル体操はこのような運動失調のある患者さんに対して、正しい力加減で正しい動きができるように運動学習を行います。
運動のコントロールを練習するために昔から行われているフレンケル体操ですが、具体的な効果や方法についてよく分からないという方もいらっしゃるのではないでしょうか。今回はフレンケル体操について詳しく解説します。
目次
フレンケル体操とは?誰がどんな場所で受けるものなのか
フレンケル体操は運動失調の改善を目的に行われる代表的なリハビリの1つです。フレンケル体操の効果や方法が分からない人のために、フレンケル体操とはどのようなものか、どのような効果があるのかみていきましょう。
フレンケル体操の基礎・概要
フレンケル体操は1887年にスイスの神経外科医であるフレンケル教授によって開発されました。フレンケル教授は運動失調のある患者さんに指鼻指試験を実地しました。その患者さんは合格ラインに届きませんでしたが、1カ月後同じ試験を行ったところ劇的な改善としていたことに驚きました。
その患者さんは1カ月の間に指鼻指試験の練習を繰り返し行ったことで改善していたのです。この劇的な改善をもたらした訓練方法に興味をもったフレンケル教授が研究を重ねた結果、誕生したのがフレンケル体操といわれています。
どんな目的で実施するの?その効果は?
フレンケル体操は運動失調のある方に対して、固有感覚入力の強化と協調運動の再獲得を目的として行われます。簡単に言うと、「視覚を使いながら、運動のコントロールを反復して、練習すること」です。
フレンケル体操は自分の動きを目で確かめながら、運動のコントロールを何度も繰り返して練習することで、脳内の神経回路が活性化し失調の症状がよくなることを期待する運動学習なのです。
理学療法士のみが行えるのか?
フレンケル体操はリハビリで用いられる運動療法なので、理学療法士が行うイメージが強いかもしれません。
しかし、フランケル体操はポイントや注意点を理解していれば作業療法士や言語聴覚士、機能訓練士でも行うことが可能です。
実際に、介護老人保健施設などでは理学療法士が作成したマニュアルを基に機能訓練士が行っている場合もあります。
フレンケル体操の例|どのような運動で体の機能を回復させるの?
フレンケル体操は120種類以上の運動項目があり、必要に応じて選択して行うのが一般的です。具体的にどのような運動があるか難易度別にいくつかご紹介します。またフレンケル体操を行うときの注意点もお伝えします。
【難易度低】フレンケル体操の例
仰向け・長座位でおこなう体操
①かかとをマットにつけ、かかとを滑らせるように片足ずつ屈伸
②下肢全体をマットにつけ、膝を伸ばした状態で股関節を内外転する
③かかとをマットにつけ、膝を曲げた状態で股関節を内外転する
④かかとをマットから浮かせて、膝屈伸
基本的に座ることが難しい方や、病気を発症して間もない方が行う体操です。視覚を使って動作修正ができるように、仰向けで行う場合は頭が高くなるように枕やバックレストを使用しましょう。
【難易度中〜高】フレンケル体操の例
椅子座位でおこなう体操
①数分間姿勢を崩さず座位姿勢を保つ
②足の前に目印をおき、目印をつま先でタッチして元の位置に戻す
③支持物を使用して、立ちあがり座る
立位でおこなう体操
①重心を左右に移動する
②床の平行線を作り、その上を歩く
③床に目印を作り、その上を歩く
座位や立位での運動は転倒のリスクも増すので支持物や介助のもとで行いましょう。運動の確認がしづらい場合は鏡を使用するのもおすすめです。
フレンケル体操の注意点
上記で紹介したフレンケル体操は一例です。一般的には患者さんに応じて選択して行われます。
フレンケル体操を行う上で、難易度の調整がとても重要です。難し過ぎると継続しづらく、転倒リスクも高くなります。簡単過ぎると改善効果を得にくいです。患者さんのレベルに応じて難易度を調整しましょう。
また、運動失調の患者さんは正常可動域を超えて関節が動いてしまう可能性もあります。筋肉や関節の損傷を防ぐために、必ず正常可動域範囲内で運動を行いましょう。
自主的な練習も必要?継続的な運動療法で暮らしを楽にしよう
フレンケル体操は特殊な器具を使うことなく行える運動療法なので、自宅トレーニングにも向いています。フレンケル体操を含めリハビリは継続することが非常に大切です。
無理のない範囲でリハビリや自主トレを続けていける環境を作りましょう。
フレンケル体操は無理のない自主練習も大切
フレンケル体操は座った姿勢や手すりを使って行う運動が多く、比較的安全に行うことができるので自主トレーニングに適しています。病院やリハビリ施設でのリハビリに加え、無理のない範囲でフレンケル体操のトレーニングを行うことが大切です。
フレンケル体操を自主練習で行う場合は「注意を集中させること」「正確性を重視した運動を行うこと」「反復すること」を意識して行いましょう。
環境調整が必要!周囲のサポートが成果につながる
運動失調の程度、併発している症状により身体の状態はそれぞれ異なります。患者さん一人ひとりに合ったリハビリを行うことが大切です。
「自分の症状について詳しく知りたい」「専門家によるトレーニングを増やしたい」と思っているかたは自費リハビリを検討しましょう。自費リハビリは自由度が高く、個々の要望に柔軟に対応することができます。
患者さんそれぞれの意思を尊重しながら、周囲がしっかりサポート出来る環境を作ることがとても重要です。
フレンケル体操についてのまとめ
フレンケル体操は運動失調のある患者さんに対して視覚で確認しながら、運動の位置や強さを確認することで固有感覚入力の強化・協調運動の再獲得を行うための運動療法です。
フレンケル体操は比較的安全で簡単にできるので、自主トレーニングにも最適です。リハビリは継続して行うことで、症状の悪化を防ぐだけでなく、改善も期待できます。無理のない範囲の運動療法を続けられる環境整備がとても大切です。
フレンケル体操は120種類以上あり、これをしなければならないという決まりもありません。患者さん一人ひとりに合ったレベルや難易度にあった運動を取り入れて行っていきましょう。