トルソー症候群とリハビリ|ガンを伴う脳梗塞のリハビリとトルソー症候群の治療について
2024.01.27
トルソー症候群は、ガンに伴う脳梗塞のことで血栓が脳に流れつくことで発症します。ガン治療中に発症する脳梗塞のうち約4分の1がトルソー症候群の可能性があるといわれています。
トルソー症候群のことをしっかり理解しておくことで、トルソー症候群の予防、早期治療、リハビリによる症状改善が可能になります。
トルソー症候群を発症した場合、ガンの治療と脳梗塞のリハビリは同時にできるのか。また、リハビリのあり方や本来の意味についても今一度考えてみましょう。
目次
トルソー症候群とリハビリ|症候群の原因やガンの種類について
トルソー症候群はガンを発症したら気を付けるべき合併症の1つです。発症の原因や、トルソー症候群になりやすいガンの種類を知っておきましょう。
またトルソー症候群のリハビリは通常の脳梗塞のリハビリと違う点があるので注意が必要です。
トルソー症候群の原因
ガンになると全身の血液が固まりやすくなります。これはガン細胞が分泌するムチンやサイトカインなど様々な物質が血小板などに作用し、凝固能亢進が起こると考えられています。
固まってできた血栓が脳に流れつき、血管がつまることで脳梗塞を引き起こしてしまうのです。このようなタイプの脳梗塞をトルソー症候群と呼びます。
ガンで血栓症が起こるどこよりも早く脳に血栓症が起きやすい事もわかってきており、ガン患者は脳梗塞を起こすリスクが約2倍との報告もあります。
トルソー症候群になりやすいガン
トルソー症候群になりやすいガンは以下の通りです。
・肺がん
・胃がん
・大腸がん
・乳がん
・子宮頸がん
・すい臓がん
ガンは末期に近い状態になるほど血栓ができるリスクが高まるので、トルソー症候群はガンの進行期や末期に多発します。
しかし卵巣がんは初期でも血栓ができて脳梗塞になることがあります。脳梗塞で病院に運ばれて、後から卵巣がんが見つかるケースも少なくありません。
リハビリはするべき?医療連携が重要
トルソー症候群を早期に発見でき、ガン疾患の治療も良好である場合は、積極的なリハビリも可能です。状態悪化がなければ回復期リハビリも継続できるでしょう。
リハビリを行う上で非常に重要なのは、ガン診療医と脳梗塞診療医の医療連携がしっかりと図れているかどうかです。ガンと脳梗塞を合併した場合は、単一診療では解決することは困難です。がん診療医と脳梗塞診療医の連携を行った上、リハビリを実行しましょう。
トルソー症候群の特徴と治療方法…前兆やなりやすい人の特徴も
トルソー症候群は脳梗塞の症状と大きな違いはありませんが、主に小さな血栓が生じるため軽度で短時間で消失することも多いです。
しかし放置すると重度の脳梗塞を引き起こすことも。トルソー症候群の前兆を知り、予防することが大切です。
TIAは危険サイン!トルソー症候群の前兆
脳梗塞の前兆として一過性脳虚血発作(TIA)が出現することがあります。以下のような症状はTIAの可能性が高いです。
・食事中…突然手に力が入らなくなって茶碗を落とす
・会話中…突然言葉がでなくなる
・読書中…突然片目が見えにくくなる
・歩行中…足がもつれる、ふらついて立っていられない
症状の持続は5分〜10分程度のものが多く、ほとんどは1時間以内です。しかしTIA発生後24〜48時間で脳梗塞を発症する可能性が最も高くなるので見逃さないようにしましょう。
トルソー症候群になりやすい人の特徴
トルソー症候群はガンを伴う血栓により脳の血流が滞ることで発症します。つまり血栓ができやすい人は発症しやすいといえるでしょう。またエコノミー症候群の既往歴がある人も要注意です。
血栓ができやすい人の特徴は以下の通りです。
「血流異常」
・寝たきりなど同じ姿勢でいる
・麻痺やケガある
・高齢者
・肥満
・喫煙
・脱水症状
「血管異常」
・動脈効果
・静脈瘤がある
「血液異常」
・女性ホルモン剤を使用している人
・遺伝的に血液が固まりにくい人
トルソー症候群の予防と治療
トルソー症候群はガンに原因があるので、ガンの治療が進めば発症リスクは低下します。抗がん剤の治療で嘔吐が激しく脱水症状が続くと血栓ができやすくなるので水分を摂取することが重要です。また、無理のない範囲で体を動かすようにし血流を良くしましょう。
トルソー症候群も主な治療は薬物による抗凝固療法です。血液を固まりにくくするのと並行して原因であるガンの進行も抑えることもトルソー症候群の抑制に繋がります。
トルソー症候群だけでなくリハビリには「患者の意思」が重要
現在は医療の進歩により、ガンや脳梗塞などの病気に上手に向き合いながら、今まで通りの生活を営むことが目標となりました。手術後や治療中においても、無理がない範囲で積極的にリハビリに取り組むことで回復力を高め、日常生活を送りやすくなることもわかってきています。
リハビリは精神症状の安定にも
トルソー症候群などの病気になってしまうと、この先の生活が不安になり、うつ状態など精神的な機能低下に陥る人は少なくありません。
患者様本人が前向きな気持ちでリハビリに取り組んだり、自分の意志で積極的に動いたりする機会が増えることは精神症状の安定効果も高くなります。
そのためにもリハビリスタッフは患者様一人ひとりに寄り添い、二人三脚でリハビリに向き合う意識が大切です。リハビリスタッフや家族など周囲の人は患者様を見守りながらサポートをしていきましょう。
自分らしく生きる!リハビリ本来の意味
リハビリテーションは単なる機能回復訓練のことだけではありません。「人間らしく生きる権利の回復」「自分らしく生きること」がとても大切でそのために行われるすべての活動がリハビリ―テーションなのです。
患者様が自分らしく生きるために必要なのはご本人の希望を叶えることです。単純な日常動作だけでなく、患者様の好きな趣味活動を行うなども重要な取り組みです。
患者様の希望を叶えるためにどのような取り組みが必要かを考え、少しづつステップアップしながらリハビリを行えるような環境を作りましょう。
まとめ:トルソー症候群のリハビリについて
トルソー症候群はガンの進行期や末期になりやすい病気です。まずは血栓ができないようにし、予防することが重要です。肥満や喫煙などによる生活習慣病がある場合は血栓ができるリスクも高いので生活習慣の改善も重要です。
トルソー症候群が発症した場合は、ガン治療の進行具合と脳梗塞の症状をしっかり把握し、治療に取り組みましょう。早期治療、早期リハビリは症状の改善や機能回復を可能にします。
患者様が病気と上手に付き合いながら今までどおり日常生活が送れるように診療医、リハビリスタッフ、ご家族がしっかりとサポートしていきましょう。