股関節疾患のリハビリで痛み・可動域改善!種類別治療法と自宅訓練方法
2023.05.05
股関節に障害が起こると、歩行時や立ち上がりの動作のさい、関節にうずくような痛みを生じます。日常生活がままならないと、精神的にも辛いですよね。
「股関節の痛みを軽減したい」「毎日を健康に過ごしたい」という人には、やはりリハビリがおすすめです。そこで今回は、股関節疾患のリハビリや治療法についてご紹介したいと思います。
股関節疾患といっても、病気の種類や進行具合はさまざまですから、ご自身にあった方法を選ぶことが大切です。具体的なリハビリの内容も、ぜひご参考くださいね。
目次
こんな股関節疾患はリハビリが必要!代表的な病気とは?
股関節に問題があると、足の付け根あたりが痛んだり、歩行時の関節の動きに違和感を感じることが多いです。ここでは、股関節疾患でリハビリが必要になる代表的な病気をみてみましょう。
変形性股関節症
変形性股関節症は、股関節の障害としてもっとも知られている病気です。大腿骨にある丸い骨頭と、骨盤にある寛骨臼(かんこつきゅう)との間にある軟骨が変形したり、すり減ったりすることで生じます。
軟骨の役割は、体重を支えながら、関節の動きを滑らかにすることです。しかし、変形性股関節症になると、関節に炎症が見られるようになります。とくに40代から50代の女性に発症が多いようです。
大腿骨頭壊死症
大腿骨頭壊死症は、大腿骨頭の血流が止まり、骨頭を形成する骨細胞の一部が壊死することで生じます。死んでしまった骨細胞は脆くてつぶれやすいので、関節の変形を進めることになるのです。
壊死の範囲によっては人工関節が必要になることもありますし、軽度の場合には、経過観察や骨頭の骨切り術をおこないます。
大腿骨寛骨臼インピンジメント
股関節の寛骨臼や大腿骨頭に余分な骨が張り出している部分があると、しゃがむなどの動作のさいに関節が痛むことがあります。関節唇の断裂や軟骨の衝突によるものです。スポーツや日常生活で、繰り返し同じ動作をすることによる刺激が主な原因といわれています。
大腿骨寛骨臼インピンジメントを治すには、断裂した関節唇の縫合や余分な骨を削る股関節鏡手術が必要です。
股関節疾患でリハビリや治療をおこなう目的ってなに?
上記のような股関節疾患には、リハビリや治療が必要です。主な治療法には、保存的治療と手術的治療の2つがあります。また、疾患そのものを治癒するだけでなく、患者の心理的な回復も目指します。
運動・温熱・薬物による保存的治療
股関節疾患のリハビリ・治療法のひとつに、保存療法があります。運動療法と温熱療法、薬の服用が主な内容です。
・運動療法
股関節のまわりの筋肉をトレーニングして鍛えていきます。関節への衝撃や負担を軽減する筋肉を強化することで、痛みを和らげ、症状の進行を抑えることが目的です。状態によってはかえって悪化してしまうので、理学療法士の指導のもとおこないます。
・温熱療法
股関節の血行をよくすることで、痛みの緩和を目指します。低周波治療器や遠赤外線温熱治療器を用いることが一般的。ホットパックを使用して、股関節を15〜20分温めまるなど、家庭でも安全におこなうこともできます。
・薬物療法
股関節の炎症を抑えるために、湿布や軟膏など、消炎鎮静剤を用います。
手術的治療
股関節疾患でおこなう手術には次のようなものがあります。
・関節鏡視下手術
股関節内部に小さなカメラを挿入して、異常を観察・診断、および同時に治療をおこないます。
・骨切り術/棚形成術
骨の一部を削ったり、切り取ったりして、関節の結合部の構造を調整する手術です。位置を改善することで痛みが軽減します。
・人工関節置換術
股関節症が進行し変形してしまった関節を人工の関節に置き換えます。
心理的なリハビリテーションも
股関節疾患による日常生活の不自由さや、術後の痛みによって、精神的に不安定になる患者さんは少なくありません。そのため、股関節疾患のリハビリでは、心理的・精神的な回復も目指します。
治療やリハビリの進め方に関するカウンセリングや、日常生活の指導もおこないます。生活指導には、体重のコントロールやリハビリ器具の使い方などが含まれていて、安心して自立した生活ができることが目的です。
股関節疾患のリハビリって具体的にどんなことをするの?
では、具体的に股関節疾患のリハビリはどのようなことをするのでしょうか。股関節まわりの筋肉を強化するだけでなく、柔軟性をアップさせることも大切です。ただし、無理は禁物です。症状にあわせて回数や頻度を調整しましょう。
座位でできるリハビリ
・膝の上げ下ろし
イスに座ったまま、膝を交互にできるだけ高く持ち上げる。そのさい、下している足は床を踏みつけるようにする。
・股関節の閉じ開き
胸を正面にしてイスに浅く腰かけて、足を持ち上げながら股関節を開いて戻す。左右交互におこないます。
長座位でおこなうリハビリ
長座位とは、足を伸ばして床に腰を下ろした状態のことをいいます。
・膝と股関節に屈曲運動
片方ずつ両手で膝を抱えながら、痛みのない範囲でできるだけ胸に引きつけます。
・お尻歩き
左右の骨盤を交互に動かしながら前に進みます。横歩きもおこないます。
臥位でおこなうリハビリ
・お尻の筋肉強化
両膝をたてて仰向けになったら、両足に力を入れながらお尻を持ち上げて戻すことを繰り返します。
・股関節の外側の筋肉強化
横向きに寝転がり、上になった足を真上に持ち上げます。左右10回程度が目安です。
股関節疾患のリハビリでおこなってはいけないこと
上記のような股関節疾患にはリハビリが必要ですが、やってはいけない禁忌肢位もあります。とくに変形性股関節症の場合には、股関節を内側にひねる動作は禁物です。また、普段からあぐらをかいたり、正座をしたりすることも避けるようにしましょう。股関節に負担がかかってしまうため、さらに症状を悪化させてしまう恐れがあります。
まとめ
股関節疾患といっても、変形性股関節症や大腿骨頭壊死症、大腿骨寛骨臼インピンジメントなど、さまざまな病気があります。症状や痛みの大きさにあわせて、適切な股関節のリハビリをおこなうことが大切です。
股関節疾患のリハビリや治療には、保存的治療と手術的治療があります。また、ご自身の心理的・精神的な回復も重要なポイントです。イスに座ったまま自宅でできる簡単なリハビリもたくさんあります。ご自身でおこなうのが心配な人は、理学療法士など専門のスタッフの指導のもとリハビリをおこなうのがおすすめです。